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もう一人のわたし
その他リレー小説 - 二次創作

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もう一人のわたし 4

「?」
「俺たちが来てから、やっと笑ったな」「見た時はびっくりしたぜ。この世の終わりみたいな顔してたからな」
ああ、そうか……。三人が一芝居打ったのか。なんだ、私そこまで暗い顔してたんだな。
「ええー。そこまで暗い顔してたの? 気い使わせちゃったね…」
「なに、いいさ」「お前が言うなよ。まさはナチュラルにまずかったろ。これはとっさに突っ込めた俺のファインプレー」
「いやこうじはアシストだな。ゴール決めたのはおれ」「お前はゴールを決める方じゃなくて守る方だろ!」
三人はまた漫才のノリで言い争いを始める。ああ、そうだ。ずっと、こんなだったんだ。小学生の時って。懐かしいな……
「お、おいおい、どうしたんだよ。泣くなよ」「!? 今の発言でどこかまずいとこあったか!?」
「二人とも、そうじゃないだろ……」
まさ君とこうじ君はおろおろし始めたが、げんえい君は察したようでいた。
私の今まで溜めていた何かが、涙となって決壊していく。悲しさもうれしさも、
どうにもならないことへのもやもやも、でもどうにかしようという確かな思いも、
そのいろんな対立するはずのものを一つにして、涙は流れていく。
「安心していい。俺たちは、この基地の秘密をお互い守り通せた間柄じゃないか」
「そうだ、そうだよな」「まりあには俺たちがついてるぜ! なあみんな!」
閉ざされた視界で頬に伝うものをどうにもならないままに感じながら、
げんえい君たちのゆっくりとした声は視界の黒から優しく染み込んでくるように聞こえてくる。
「……ありがとう」
私には、その言葉がやっとだった。涙の意味を、そう表現するのでやっとだった。

「さて。ここまで来たのはまあ、いいとして。これからどうしよ」
仲間たちは早速それぞれ持ち寄ってきたもろもろ(冷蔵庫なんてどうやって運んできたんだろう……)を
事務所内に配置した結果、昔の秘密基地を遥かに超える豪華さとなった。
しかし、内装、家具等の整理のドタバタをとりあえず終えてみても、
今できることが、これからを案じて途方に暮れることだけなのはどうしようもない。
「おなかの赤ちゃんとか、生活費とか、さてどうしよ……」
もう夜もそこそこ更けて、基地メンバーの大半は帰った後。
後にはあの熱血高校二年生トリオと、一つ上の先輩の豪田さんだけが私を除いた唯一の女子として残っている。
「ばっちりおぼえておくぜ!」
こうじ君は真面目なタチらしいのか、整理が一段落ついたところで教科書か何か取り出して、自習を始めた。
しかし昔からだけど、暗記ものの教科であのセリフが無意識に出てるとこ、昔っから変わらないなあ……
さすがに学校ではこうじゃないだろうと信じたい。
「そうだ、さおりちゃん、帰らなくていいのか。兄貴が心配するぞ?」
思い出したようにこうじ君が呼びかけたさおりちゃん、とは豪田さんの名前。
「うわ、やめてくれ。勘弁してくれよあの兄貴さんだけは……」
げんえい君が思い出してはならないものを思い出したかのような表情をする。
「まあ……、つよしは悪いやつじゃないが、さおりちゃんのこととなると別人になるからな」
まさ君は豪田さんのお兄さんと面識があるらしい。そういえば私もどんな人か知らない。
「豪田さん、私なら大丈夫ですから、お兄さんに心配かけない方が……」
「でも、まりあちゃんがこんな状態なのに、ほっといていいのかどうか……」
「いや、ここはオレに、まかせておきなさい!」
豪田さんの言葉を、げんえい君が遮る。
「『オレたち』だろ」
まさ君の突っ込みもスルーして、げんえい君は続ける。
「確かに不安だと思う。先輩として力になりたいと思う気持ちは、俺にもよぉーく、解る。
 でも、これはちょっとした問題、じゃないんだ。まず新しいトラブルの元になりそうなものは徹底して消していこう。
 それにはまず、兄貴さんを心配させちゃいけない。兄貴さん、この基地の存在は知らないだろ? 下手に知らせてまりあの居場所をうるさくするのはどうかと思うんだ」
「それは、そうですね」
豪田さんはげんえい君の言葉に頷くばかり。
「今できることは限られている。で、不安だろうけど、みんなで少しずついろいろ進めていこう。
 なに、このげんえいさんがいるからには、さおりちゃんもまりあも、
 何もかもどーんと任せておきなさい!」
「いや、お前が産むわけじゃないだろ」「……」

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