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もう一人のわたし
その他リレー小説 - 二次創作

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もう一人のわたし 3



友達に連絡するな、なんて言っても、真相はすぐにどこかからバレる。
今までピンピンしていた知人が不自然な長期入院となったとなれば怪しむのは当然だし、
それが単なる知人ではなく、秘密を共有している友人だとしたらなおのことだ。
「ほんと探したんだよ? やっぱり、入院てのはウソだったんだね!」
そう言ったのは、中学に入り、一年、二年と別の組になって疎遠だった子。
小学校で見たこともないぐらいの勢いで、心配していた感情をぶつけてくる。
彼女だけじゃない。小学生時代の基地仲間という一点で結ばれた学年の違う面々が、今こうして自分のために一堂に会していた。
「電気も点けないで、何してたのよ」
「まさか点くと思わなかっただけでしょ。まさか自家発電が生きてたとは思わないし」
「これ、昔苦労して回復させたなー。生きててよかった」
本来点くはずのない電灯が今こうして点いているのも、この工場の設備だった太陽光自家発電装置のおかげ。
秘密基地仲間同士、理科に強い人間を掻き集め、苦労に苦労を重ねた結果、建屋屋上のソーラーパネルと蓄電池の機能を回復させ、
制限付きながらも敷地内の送電ができるようになったのであった。
「ありゃ、燃えたなー」「あれで電気関係に強くなったおかげで、おれ又川に通ったんだぜ」
「何言ってんだ、あれのMVPは園川だったろ。あいつ千里台行っちまったけど」
電気を通すという小学生らしからぬ離れ業も、今や懐かしい。まだ成人すらしていないのに過去への懐かしさ、
ここにいない仲間への懐かしさがしみじみと感じられる。『産む・産まない』という、自分と自分の分身を巡る延々たる堂々巡りに突き落とされていた私にとって、
他者の存在は間違いなく救いに感じた。それが見知った面々だったから、なおのことだ。
しかし、真っ先に話しかけてきた男子高校生のことを私はなかなか思い出せず、じーっと見つめてしまった。


「……なんだ、まりあ。もしかしてオレのこと忘れてる?」
「げんえいは影が薄いからな。まあしょうがないな」
同じ白の学ランを来た、別の男子高校生が後ろからつぶやく。
「こうじだって人のこと言えないだろ!?」
あ、そうだ。思い出した。私が小1だった時、
しょっちゅう漫才みたいなやり取りしてる四年生コンビがいたっけ……
リーゼント気味のこうじ君に突っ込み返してる、短髪の少し背が低い人が、げんえい君だ。
「やめとけ。妊婦の前なんだぞ、静かにしろ!」
グラサンで(本人は眼部保護用強化ゴーグルだと言って譲らない)キメた風にしてるのはまさ君だったっけ。
たまにこうして突っ込み役で、先の二人とトリオになる。
「……おい」「……おい」「あ」
まさ君の言葉でとても気まずい空気が流れる。
「い、いや、それって本当だし! そうそう、私産むんだよ!? そう決めたんだ! そうそう!」
私がフォローしたとしても、当然もはや遅きに失したわけで。
「なんだ、その、すまん」「まさ、それはひどい! おそい! まずい!」「おまけに高い!」
「高いってなんだ!? 美味しいお店の逆みたいに言うな!」
ああ。『早い・安い・うまい』。まさ君、なんと的確な突っ込み返しか。しかしおかげで気まずさも吹っ切れた気がした。
「……やっと笑ったか」

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