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極めて近く限りなく遠い世界に
その他リレー小説 - 二次創作

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極めて近く限りなく遠い世界に 3

「」男の声が聞こえた気がした。
「気がついたみたいですね」これは少女の声か。
「お、目開けたな」

俺は知らぬ間にどことも知れぬ家に上げられ、ベッドに寝かされていた。
目の前には、赤い学生服を着たえらく背の高い男と車椅子の少女とがいる。
「ここは……」
「いや驚いたよ。麻衣ちゃんに傘を返して家の周りを二人で散歩してたら、君が倒れてたんだから」
男はこれが正にえびす顔かというような緩やかな表情で説明する。
「でも気がついて、良かった」
まだ少女と言うべきセミロングの黒髪の女の子は、にこやかに応える。
「君たちが助けてくれたのか、ありがとう」
「いや、無事ならいいよ。後輩を助けるのは先輩の務めでもあるからね」
「後……輩?」
「君のポケットに一応中学校の生徒手帳があったけど?」
ポケットの一つに、確かにそれらしきものがある。
「一応中学校三年……橘良介……」
あの時、あの剣より聞いた名前と同じだ。なぜこの手帳に気が付けなかったか…
首を見ると、あの石もある。
「大丈夫? 送ろうか? 僕もちょうど帰る所だから」えびす顔の男が言う。
「ここはあなたの家では?」「ないよ。ここはこの麻衣ちゃんの家でね」
困った。が、厄介になり続けるわけにもいかない。俺は事情を話すことにした。
「ん〜、記憶喪失か…」
「まあ……でも、一応中の人ですから、近所の人であるのは間違いないですね」
麻衣ちゃんと呼ばれた少女の言葉にうなずく。話を聞くと
ここは一応町という町で、町内に一応中学校という中学もあるらしい。
そしてこの男の人は、町内の一応高校に通う大間仁さんというようだ。
「さてなあ、どうするかねえ……」
そして俺と大間さんは麻衣さんの家を離れ、一応署へ出向いて事情を告げて
出された捜索願を当たってもらうも、該当するものはなかった。
近くの病院からも記憶喪失の患者が逃げたなどのことはないらしい。
そして警察から一応中学校に連絡したところ、住所は判った。
しかしその住所は何故か存在しないものだった。
「中学校入学時に届け出、知られていたはずの住所が実は存在しないものだった……」
これで何も手がかりはなくなった。俺は大間さんとただ歩いている。
「ま、しょーがないよ。なんとかなるさ。とりあえずぼくの家でケーキでも……」
「おおー!いた!仁くんがいたぞ!」
大間さんのしゃべりを遮るように遠くから聞こえてきたのは、異様に甲高い男の声だった。
その声の主ではない人影も複数近づいて来る。大間さんと同じ赤い制服だから
彼らも一応高校の人たちで、大間さんの知り合いなのだろう。
にしてはどうも気のせいなのかどうなのか、走ってくる彼ら……四人は
人間にしては頭身が縮こまって見えるような……。
「お!リーダーにみんな!これはいいところに」
大間さんがリーダーと呼んだ、さっき駆け寄りつつ叫んでた人は手に青く光る何かを持っていた。
「いや〜、見せたかったよ仁くん。実は昨日、町内ですごくド派手なヒーローショーがあってさ!
 空飛ぶ青いドラゴンが火や吹雪を吐いてくるのを肩の機械で空飛んで
 刀を持ったヒーローがばっさばっさと……」
パッと見凛々しい顔かたちのその人が楽しげにショーの内容を語っている所へ
眉の異様に太い、たぶんその人と同年だろう人が止めに入る。
「リーダー!昨日のヒーローショーの内容はいいんだよ!その現場に落ちてたそれだ!」
お、そうだ、とリーダー氏は手の中の青いものを開き見せる。
「この青い石がどうかしたの?」
大間さんは素っ気なく返したが、素っ気なく返すには
どう見てもその宝石の放つ青い光は、ただものではなかった。
「仁、いくら食うこと寝ることにしか興味がないお前でも、
 それがただものでないことぐらいわかるだろ」
太眉の人が大間さんへ石を指さし言う。そういえば、さっきリーダー氏の語った
ヒーローショーの内容に心当たりがある気がする。自分が戦ってた青い龍のことではないのか。

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