ドラゴンクエスト外伝〜スライムナイト・ピエールの旅〜 32
「花魔道!私について来てくれるか?」
「イーター様…、地獄の底までお供致します!」
マンイーターは頷くとローズバトラーを指差した。
「私がおとりになる、その間にスライムナイトとその仲間を救出、ウィッシュへ引き返せ」
「しかし、それではイーター様が…」
「バトラーとは一度手合わせしてみたくてね」
花魔道は顎ひげをなでると、目をつむり小さく頷いた。
「任せたぞ、花ちゃん」
「花ちゃん!?」
花魔道が驚いて目を開けると、ローズバトラーの前にマンイーターは立っていた。
「ほぉ、裏切り者がノコノコと…」
「…バトラー様、ご機嫌が悪いようですね」
「イーター、お前は生かして帰さんよ」
ローズバトラーが全身を震わせ闇の波動を放つ、しかしマンイーターに変化はあらわれない。
「私は長年バトラー様の側にいたのですよ?」
イーターは静かに笑うと、ローズバトラーの触手を斬り裂き、ブレッドを助け出した。
「タダではやられぬか…」
ローズバトラーが怯んだと同時に炎の海が二人を囲む。
「イーター様、ご武運を!」
炎の中から花魔道の声が聞こえると、ブレッドの姿がいつの間にか消えていた。
「ほぉ、花魔道を手なずけておったか…、相手をしてやりたいが、魔王がうるさいのでな!!」
ピエールは気がつくと、なぜかウィッシュの町にいた。近くでブレッドたちが寝息をたてている。
「やっと起きたか、まる一日寝ているとは呆れたものだ、フェイルの城がどうなっているかも知らずに…」
「フェイル城がどうかしたのか!?」
ピエールが立ち上がると、花魔道は少し間をおき話しだした。
「フェイルの国王は、他の町を守る為に少数の兵を連れ出撃、モンスターに囲まれ死亡した。今はケリィ王子が軍の指揮をとっている、状況は絶望的だ」
ピエールはうつむいて再び座りこむ。
「俺はこんな所で何をしているんだ…」