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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 79

「まだ質問が……」
「えー……休憩しようよー。それにやらなきゃいけないこともあるしぃ」
まだ何かやるのか。
「こ、これ以上なにをやるのよ?私を封じ込めただけで充分じゃない……」
「いえいえ、見たいアニメがあるのですぅ」
虹風春はリモコンを取り出し、ポチッとテレビを付けた。
流れてきたのは何人かの美男子がアイドル活動をしているアニメだった。
「ふひひ……ふひ……今週は神回の予感……」
心底、どうでもよかった。
いつまで待たされるのだろうか、私。
 


フィルデスペア、は魔女から貰った魔法だ。
本来であれば、普通の魔法使いには使えない禁忌の魔法。
私とお兄様は、小さい頃に魔女にあった。
そして「魔法」を受け取った。
大事な、大事なモノと引き換えに。
そこから私と兄は、世界から疎まれた。
まだ幼かった二人は、隠れるように身を隠した。
そして誓った。
自分達の力で世界を見返すことができるようになるまで、身を隠そう、と。
でも、もう隠れる必要はない。
ようやく、この世界を壊す時が来た。
この闇の魔法は、世界を塗り潰す魔法だ、と魔女は言った。
この世のモノは少なからず「色」を持っている。
それは紫の雷だったり、蒼の炎だったり、白の水だったり。
人間の視覚は、モノに光があたり、その反射を目で捉えて初めて、そのモノの「色」を認識できる。
逆に言うと、光がモノに当たっても反射されずに吸収されてしまうと、私達は「色」を認識できないのだ。
実際に、ベンタブラックという物質が正にそれだ。
ベンタブラックは光の反射率が0.035%で、非常に小さく、光を吸収してしまう。
それゆえに人間の目では、本当は違う色なのかもしれないその色を黒としか認識できない。
世界一黒い物体とも言われている。
だが、そのベンタブラックよりも光を吸収し、いや、光だけではなく何もかもを吸収し、脱出さえも許されないものが世の中にはある。
それを「ブラックホール」と呼ぶ。
私の魔法は、簡単に言うとブラックホールを作っている。
飲み込まれたら最後、あとはその中の超重力により壊れるだけ。
だからこの魔法は加減が難しい。
正直、ほとんどできないと言ったほうがいい。
それでも私は筋が良いらしく、魔女からこの魔法を貰った。
青空美空を壊しすぎないようにするのは、なかなか神経を使った。
……さて、話を戻しましょう。
目の前の男は遠慮をする必要はありません。
それどころか先ほどから失礼なことばかり。
そんなに破壊されたいのなら、破壊されてしまえばいい。
「お行き」
私の魔法が彼へと強襲する。
彼は手の平を目の前に出したが、フィルデスペアが彼の見えない魔法を飲み込んだ瞬間に後ろへと飛んだ。
「あっさりか……さすがに無理だな」
「逃がしませんわ?」
彼の速度より、私の魔法のほうが速い。
しかし、もう少しで飲み込むところで、私の魔法は『かき消された』。
それは私にとっては新鮮で驚いた。
今まで消す方はこちら側で、消されたことはないからだ。
そしてもう一つ。
今の魔法は、ある魔法に似ていた。
「隠し球がまだいたとは思いませんでしたわ?」
「別に隠れてなどはいない。賑やかなのが苦手なだけだ」
彼は、間違いなく魔法無効化能力者(マジックキャンセラー)だ。
「その特異な能力……まさか、あの綺羅綺羅世界の血縁かしら?」
「恥ずかしながら、そのまさかだ。もはや……性別は分からんがな……」
ビッグニュース。だが、それなら納得できる。
これはまた厄介な魔法使いが増えた。
「ダブルマイスターになった、と言ってらしたわね?失礼ですが、もう一つの名を教えてくださらない?」
「ああ……規格外破壊みたいなものか。そうだな……確か『最終防衛(デッドライン)』だったか」
なるほど。
私が矛であるのなら、彼は盾か。
なら、とことんやってみたくなる。
思わず私は微笑んでいた。
久しぶりに、全力を出せる。
更に深い闇を出せる……。
彼はそんな私に危機を感じたのか、既に魔法を展開していた。
不可視の物理&魔法無効化防壁、といったところでしょうか。
楽しくなってきましたわ。
しかし、ピチョンと魔力を波動を感じた。
『合図』がきた。

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