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GENIUS
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GENIUS 7

「違うっ、君じゃなくその才能が悪かったんだ!」
「同じでしょ!私の才能なんだから……私は『不幸の天才』…」
ズドンッと地響きが鳴る。
そういえば昔、神子さんが言っていたことを思い出す。
「『天才』が自分の『天才』を自覚した時が一番厄介だ」
そして今、水平線から津波が押し寄せてるのは目の錯覚じゃない。
「ちょ…!?マジ…?」
「また…私だけ…生き残るの……」
「………そんなことないわ」
死神ちゃんが前に出る。
慌てる俺を尻目に、死神ちゃんはその鋭い眼光を津波へと向ける。
そして何か短い単語を呟いた瞬間、津波が何事も無かったかのように『消えた』。
「え……どうして……」
「死神ちゃん……こんなに大きいものも『消せる』の?」
「………私に消せないものなんてありません、多分」
死神ちゃんは呆然と海を見つめる冬木かえでに目線を移した。
「………次は貴女の『天才』を消します」
そうして死神ちゃんがまた何か呟くと同時に、今回の依頼は終了したのであった。


「ただいまー」
「………ただいま」
「おかえり。うんうん、二人とも無傷ね?お疲れ様でした」
「俺は死神ちゃんがいないと死んでいました」
「だから『不幸の天才』って言ったでしょ?死神ちゃんもお疲れ」
「……無色くんにちゃんと給料あげてください」
「分かったわよぉ…」
どうやら給料は出るらしい。
「冬木かえでは『天才』を失って何て言ってた?」
神子さんはニヤリと笑いながら聞いてきた。
それはまるで冬木かえでが何と言ったか分かるかのように。
「冬木かえでは……」
『天才』を失うことができた…私ってばラッキーです。
彼女はニコッと今まで見せたことのない笑顔を俺らに見せた。
ただその目には涙が浮かんでいたように見えた。
「やっぱりね……ねぇ、無色くん?死神ちゃんのおかげで無色くんも死神ちゃんも無傷だったわけよね?」
「はい……それがどうかしんですか?」
「周りに悪いことがおきずに、自分だけ良いことがおきることを何と言う?」
「え……?えと…それは……」
「…………『幸運』」
「死神ちゃん正解っ!無色くん遅いわよ。冬木かえでは『天才』を失って初めて『幸運』になれたのよ」
不幸の螺旋はここで終わり。
俺も給料がもらえたわけで、何気にハッピーエンド。
いや、ラッキーエンドに違いなかった。



第二章 『Please Please Please...』



結論から言えば、目の前のベッドに横になっている佐倉翼(サクラツバサ)は『無欲の天才』である。
佐倉翼は16歳の時に天才を自覚、同時に倒れ脳死状態になった。
1年経った今でも意識は戻らず、病院のベッドで寝たきりである。
偶然、病院の用事で佐倉翼が眠る病院に訪れた神子さんが彼を『発見』し、こうしてその病室にまた俺と死神ちゃんだけで来ていたのだ。

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