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GENIUS
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GENIUS 4

「他にもバスジャック、銀行強盗など、様々なことに巻き込まれたことがあります。なんとか…無事に生きていますが…」
「………『幸運の天才』…」
ポツリと口走ってしまう。
まさに神に愛された子。彼女ならいかなる事故、災害、事件に遭遇したとしても生き残れるだろう。
今、俺がこのフォークで彼女を殺そうとすると、何かしらの幸運が彼女に働き、彼女は無事なはずだ。
「はい…私は人より幸運なのでしょう。いえ、運が良過ぎます」
「確かに…ただ運が良いだけではないですね…」
しかし腑に落ちないことがある。
それほど幸運な彼女がうちに電話をする理由がない。
「あの…それで…うちに電話をした理由なのですけど…?」
「………私の幸運を、消して欲しいのです…」
それは、今までの彼女を捨てるという意味なのではないか。
「また…どうしてそんなことを?」
「私はこの幸運のせいで、いつも1人だけ助かります。……時々思うんです。私にこの幸運が無かったら、あの墜落事故の時に…お父さんとお母さんと一緒に死ねたんじゃないかって…そのほうがよっぽど幸せだったんじゃないかって…」
「な…何を馬鹿なっ!!」
「それだけじゃありません!!バスジャックの時だって…学校の火事の時だって……大事な友達が死んじゃったのに私だけが生き残ってる…もう嫌なんです。私だけ幸運なのはっ……」
それは彼女が幸運過ぎるための代償。
不老不死の人が永遠の命を得た代償に終わることのない別れを得てしまうようなことである。
彼女にしか分からない、悲痛の叫び。
それを凡才である俺が分かってあげることなんて…出来ない。
「……本当に…いらないの?」
死神ちゃんがポツリと呟く。
「……いりません。こんな…人とは違う才能なんて…いりません。普通の女の子に…なりたいです」
「……そう。分かりました。後日またお会いしましょう。連絡はこちらから後日致します。……無色くん行くよ。もう聞くべきことと成すべきことは分かったよ…」
「いや、死神ちゃん…お金ないから…」
「あ……」
食い逃げだけは避けたいところである。
「あのっ……」
「はい…?まだ何か?」
「なんとか…なります」
と彼女が言った瞬間にジリリリリ、っと黒電話ではなく火災報知器らしい音がする。
すると奥から店員さんが出て来た。
「火事です!!お代はいりませんので早くお逃げくださいっ!!」
奥のキッチンらしきところからブワッと火の手と煙が迫る。
慌てて避難しようとする俺と死神ちゃんに
「ほら…なんとかなりました。私ってばラッキーです…」
と言い残し、『幸運の天才』冬木かえでは去っていった。

「ただいま帰りました」
「おかえり、死神ちゃん、無色くん。冬木かえではどうだった?」
「どうも何も無いですよ…酷い目に遭いました」
俺は冬木かえでのことと、ファミレスに起きたことを神子さんに話した。

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