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GENIUS
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GENIUS 30

何年付き合っていると思っているのだろうか。
表面上は変わってしまったかもしれない。
でも…根っこの部分はツバキだった。
「いいかツバキ…いくら嘘を重ねようと、俺には分かる」
「『その名前で呼ぶんじゃねー!!』」
「っ…色筆……」
「『もう喋るな』」
色筆は会話すらも拒絶した。
「『俺を見るな』」
「『俺を思い出すな』」
「『俺を……許すな』」
怒涛の『必然』が俺と彼の距離を離す。
でももう遅い。
彼を止めると誓った。
そして、彼のために死ぬ覚悟も……ずっと前にした。
そろそろ立っているのも辛いんだ。
この薬…マジでヤバいんだな。これでいい。
俺が死んだら、ツバキは解放される。
俺が生きたら、またあの頃に戻れるかもしれない。
頼むぜ、ツバキ。
俺を殺すなよ。
俺はツバキに微笑みながら倒れた。



この工場まで走ってきたから、無色は汗だくなんだと最初は思っていた。
しかし、それは勘違いだった。
惜しみない『必然』を与えた後に、無色の体から注射器が落ちた。
その注射器、この場所……あの思い出が一瞬でフラッシュバックする。
そして無色が微笑みながら倒れたことで、すべてを理解した。
「サイキっ…!!」
倒れたサイキに近づく。
薬の症状、高熱に発汗、痙攣、呼吸困難……あの薬だ。
「ふざけんなよテメェ!!」
俺が体を張った意味がねーじゃねぇか!
「『死ぬな!』絶対『死ぬな!』俺をまた1人にするんじゃねぇよちくしょう!」
昔、俺は大きな過ちを2つした。
1つはサイキから離れてしまったこと。
もう1つは自分が『必然の天才』になったにも関わらず、知らず知らずとはいえ「友達じゃない」と言ってしまったこと。
「俺はなっ…お前がいなきゃ生きてねぇんだよっ!」
ただただ本心を叫んだ。
あの時に凍ってしまった心がゆっくりと融解する。
「なんで俺だけ『天才』になっちまったんだよっ!ふざけんなよっ!ただ普通にお前と馬鹿なことしていただけで楽しかったのによぉ!どうしてなんだよぉ!」
俺の叫びなんて届いているのかいないのか、サイキの体の震えは増してく。
ダメだ…この震えは、何度も見たことがある。
サイキが死んでしまう予兆だ。
「やめろ…『死ぬな!』『お前は死なないことが決まっている!』」
死なないことが決まっている?
そんな言葉、自分で言ってて馬鹿馬鹿しくなる。
人間は必ず死ぬ。
死ぬことを『必然』にできても、死なないことを『必然』にはできない。
地球を破壊ことはできても、創造することはできない。
悪魔にはなれても、神にはなれないんだ。
「うぉぉぉっ…!『震えが止まれっ』『薬の効果が消えろ』『それは全て必然なんだよっ!』」
サイキの震えが止まる。
そしてすぐにまた震え始める。
なんて……無様な『天才』なんだっ…!
「ちくしょっ!ちくしょお!」
涙はさっきから出ている。

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