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GENIUS
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GENIUS 26

事務所に着くと、頭の悪いメモ書きが神子さんの机にあった。
どう頭が悪いかというと、この内容では2つの意味が取れる。まずは
「おやつはない。適当に食べて。でも無色くんは食べてもいいけど、死神ちゃんはおやつ抜き」
が1つ。
もう1つは
「おやつはない。適当に食べて。でも無色くんはおやつの名目で死神ちゃんを食べちゃダメ」
である。
神子さんの性格からして、おそらく後者であり、このメモ書きを見た俺らが面白いことになればいいな、と思っているのだろう。
そんな作戦には乗らない。
「死神ちゃんはおやつ抜きだってさ?」
2つの意味を1つに絞る!
というかこれ以上好感度を下げられては、正直しんどいのである。
「……え……ぁ…そういう意味ですか…」
ニヤリ。
「…死神ちゃんはどういう意味だと思ったの?」
「…いえ……ごめんなさい」
「え…?なんで謝るの?」
「ごめんなさい…」
面白くもなく、気まずくなった。
どうしてくれる、この空気。
そしてこの空気をぶち壊す着信音が鳴る。
「公衆電話…?…はい、もしもしっ…?」
「…………………」
「もしもし…?」
「久しぶりだな、無色」
全身の毛が逆立つ。
それは、懐かしい声。
「お…まえ……」
「おいおい…俺の声を忘れたのか?」
忘れるはずもない。
その声だけは、忘れない。
「…椿貴色筆っ…!!」
死神ちゃんの目がキッと鋭くなり、脱兎のように事務所から出て行った。
「死神ちゃんっ…!!」
「お?へぇ…『E』もそこにいるのか…いい女だったよな、好みのタイプだ」
「色筆…お前っ…」
「『あいうえお』から出たよ。脱走なんて言うなよ?お前らは元々俺を縛り付けてなかったんだからな」
『O』は椿貴色筆が初めての住人だった。
最初は厳重なんてもんじゃないほどの監獄だった。
拘束具を付けられ、住人は満足に動けないほどだった。
しかし、そのすべてが意味なし。
理由?『O』だから。
「ま…無理か。俺を縛り付けるなんてことができるのは……そうだな、俺くらいだ」
「どうして…『あいうえお』から出た…?」
「おい…お前は俺を出したかったのか?出させたくなかったのか?…ま…どっちでもいいか。どうして出たか…か?そうだな…理由はなんでもよかったんだがな……」
「色筆」
「あ……?」
「『あいうえお』に戻れ」
「嫌だね。どうしてお前の指図を聞かなきゃいけねんだよ」
彼の声が痛烈に俺の耳に刺さる。
もう…昔の彼じゃない。
「はっ…お前、変わったな」
「そっちこそ……」
変わってしまったのは、お互いのいる場所が違い過ぎるから。

「俺は…」
「俺は…」
「お前の天才を」
「お前の凡才を」
「恨む」
「憎む」

電話を切る。
もう……話すのが辛い。
そして、どうやら決着をつけなきゃいけないらしい。
この辛い運命に。

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