GENIUS 25
「いや…俺のアドバイスなんて役に立つかな…そういうの選ぶセンスなくて…凡才だから」
「ううん…助かる…」
ブロロロロ…とバスがバス停に止まり、俺達は降りる。
「死神ちゃんの考えはもうあるの?」
「…うーん…日常で何か使えるもの…程度かな」
大きい百貨店に着く。
「日常でか…そうなるとやっぱり一緒に住んでる死神ちゃんが一番分かるんだけどなぁ…」
いろいろ見て回るもこれといったものがない。
「恋さんに聞いたほうが良かったかもなー」
「………………ぁ…」
不意に死神ちゃんが声をあげる。
死神ちゃんの視線の先には…色とりどりのマグカップがあった。
「マグカップは…どうでしょうか…?」
「いいと思うよ?神子さんコーヒー飲むし」
しかし…色の種類が凄いな。
どこかの携帯電話みたいである。
「……無色くんは何色がいいと思う?」
「あー…ちょっと待って。迷うなこれは…」
赤、橙、黄、黄緑、緑、空、青、紺、赤紫、紫、桃、茶、焦茶、黒、灰、白。
見事である。
死神ちゃんは一つ一つ手に持って確かめている。
「…逆に…選びにくくなってきた…」
ふと目を横に逸らす。
そこには耐熱性のあるガラスのマグカップがあった。
「死神ちゃん、これなんだけど…どう?」
「ガラス…ですか?」
「うん。色で悩んでるくらいなら、中に入れる飲み物次第が良いかなって?コーヒーなら黒、紅茶なら赤、ホットミルクなら白……みたいにね?ある意味どの色にもなれるでしょ?」
ガラスのマグカップを死神ちゃんに渡す。
「……確かに…いいですね…これにしましょうか…」
死神ちゃんが会計を済ませる。
「…どんな色にもなれる、か…」
昔の記憶のどこかに引っかかる。
あれは小学校の頃だったか。
それとも中学校の頃か。
今ではもやがかかったかのような曖昧な記憶。
「おい、サイキ…俺は無色って名前好きだぜ?」
「え?なんで…?」
「名前に色が入ってる奴はかっけーんだよ」
「ツバキも色筆だから入ってるよね?」
「あぁ…俺のは読みにくて嫌だけどな?だから、俺の筆でお前に色を着けてやるよ。どんな色にもなれるんだぜ?お前は…?」
「じゃあ…」
「まずは白を教えてやるよ」
「…無色くん?」
死神ちゃんに呼ばれてびっくりする。
「あ…ごめん。ちょっと考え事を…」
「…買ってきました。帰りましょう」
「うん。あ…死神ちゃん?」
「…はい?」
「純白のパンツって持ってる?」
「…………………」
「あれって凄い白が綺麗だよな」
「…………無色くん」
「ん?」
「変態っ…」
スタスタと歩き去る死神ちゃん。
俺は曖昧な記憶と引き換えに、死神ちゃんからの好感度を失った。
「新しい子が入ったので見に行ってきます。おやつは無いので適当に食べてください。でも死神ちゃんは食べちゃダメだぞ?」