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GENIUS
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GENIUS 20

気付いたら1人だった。
担任の先生も自分のクラスでいじめなんて無いと言い張っていた。
僕もその時はいじめとは思っていなかった。
僕がただ、大人しく、みんなに言われる通りにしていればいいだけ。
学校に行き、給食を食べ、家に帰る。
ただそれの繰り返し。
まるで教えられた作業しか出来ない機械人形のようだった。
ある日の朝、先生が来る前に僕はクラスメートにバケツ1杯の水を掛けられた。
冷たいよりもまず、床が汚れてしまって「拭かなきゃ」と思った。
先生が来て、どうして床が水溜まりなんだ?と聞いた。
「無色がバケツの水をこぼしましたー」
クラスメートの1人がそう言う。
「早く拭きなさい」
と、先生がびしょ濡れになっている僕を無視して朝のHRを始める。
クラスメートの一部がクスクスと先生に気付かれないように僕を嘲笑った。
そんな時だった。
「先生、無色はやってない」
と、クラスメートの1人が言った。
「無色はこいつに水を掛けられたんだよ」
と、彼は僕に水をかけた奴に指を差した。
「ち、違います…」
「はぁ?クラスメートのみんなが見てたんだっつーの!お前だよ!」
彼が凄むと水をかけた奴は小さくなり、最後に泣きながら自分の非を認めた。
休み時間。
僕は彼に礼を言った。
「……ありがとう」
「あ?いいよ。俺がムカついただけだから。ちなみにお前もムカつくからな。いつもオドオドしてよ」
「……ごめんなさい」
「うっせーな。お前が悪いんだ。もっと男らしくしとけばいじめられねーのに」
彼はあっさり言う。
男らしくすればいいのにと。
「……分からないんだ」
「あ?」
「……どうすれば男らしくできて、みんなにいじめられなくなるのか…分からないんだ」
僕は精一杯、きっと泣いているだろうけど、自分の本心を話した。
「……分かった。俺が教えてやるよ。そのかわり、もうオドオドすんなよ?」
彼は僕が待ち望んでいた言葉もあっさり言う。
「じゃあ…これから友達な。よろしく」
「…ありがとう…よろしく…っ…」
「泣くな!」
「…うん…嬉しくてっ…ごめん。すぐ泣きやむから…」
「俺が泣かせてるみたいじゃねーか…」
そして僕はその日ずっと泣いてしまって、彼はずっと怒っていた。
だって仕方ない。
初めて友達が出来たのだから。
それがツバキとの出会いだった。
『あいうえお』の『O』の住人。
椿貴色筆(ツバキイロフデ)。


「ねぇ色筆くん」
「やめろ…俺のことはツバキと呼べ」
「…ツバキ…?」
「そう。その代わり、俺はサイキと呼ぶ」
「…うん。いいよ」
ツバキと過ごす毎日は楽しかった。
朝学校で会うと、馬鹿な話。
スカートめくりを始めてやった。
給食は早く食べないとツバキに取られちゃう。
たまにツバキのを食べてやった。
帰りは日が落ちるまで近所を冒険。
トンボの捕まえ方を教えてもらった。

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