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GENIUS
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GENIUS 18

……痛い。
とても痛い。
弾が貫通しないで、私の太ももに残ってる。
血も出て、真っ赤だ。
あ……ようやく思い出してきた…。
ショック療法としてなら最高の痛みだ。
大丈夫。
お父さんの握り拳よりは……痛くない。
お母さんの叫ぶ声よりは……痛くない。



「あは♪もう…動けないよねん?どうやら…私の勝ちん?」
「…痛いよ。お父さん、お母さん…」
勝ちを確信する。
足を怪我したインパラはライオンに食べられるしかない。
ニタリと笑みを浮かべてしまう。
私は狩る側。
守る側なんてまっぴらごめん。
『防衛の天才』だと自覚した時は自分を呪った。
でも逆に考えれば、いくらでも攻撃ができるわけ。
たくさんの人間を傷つけてきた。
だって楽しくて仕方ないもの。
「じゃあ…そろそろ終わりねん♪」
銃口を死神ちゃんの頭へと向ける。
やっと、そこで気付く。
「……痛くて…嫌だ…消えて」
彼女の雰囲気が変わった。
それがあまりにも奇妙だったから引き金を引…
「あれん?」
銃がいつの間にか『消えた』。
おかしい。
ナイフは……ナイフも『無い』。
彼女はまだ座り込んで足の痛みに耐えて……
あれ?太ももの傷が『消えて』ない?
おかしい。おかしい。おかしい。
なんで?
どうして?
傷が『消える』?
「そんなのん?…異常……っ…」
思わず声に出してしまい、それから気付く。
彼女が『異常』だということに。
もう私の武器は全て『消えて』しまった。
いつの間にかこの部屋のものもほとんど『消えて』いる。
「……ちっ…」
私には…攻撃の才能が無い。
格闘技なんてやってないし、素手で戦うとなると……そこらの女子高校生と変わらない。
でも、私には最強の『防衛』がある。
こうなったら、首を絞めるしか、彼女に勝つ方法が無い。
彼女は下を向いてピクリとも動かない。
だから今…首を絞める。
「悪いわねん?もう終わりにっ…!」
精一杯力を込めて首を絞める。
格好悪い殺し方だけど、仕方ない。
今殺さないと、こっちが殺されることが本能的に分かる。
「くる……じ…ぃ………い、や……」
「このまま死んでっ…!?」
あれ…力が抜けて…いく。
彼女の首を絞めることが出来ない。
両腕の力が『消えた』。
すると私はグニャリと人形の糸が切れたように倒れる。
あぁ…両足の力も『消えた』んだ。
そこでようやく気付く。
私の負けは最初から確定していたことを。
「……っ…反則…よん…」
「…はぁ…はぁ………」
彼女は息を整えると、真っ直ぐに私を見つめた。
その瞬間、私の『天文学的な数の防衛』を一瞬で『消去』し、同時に私の『天才』を『消された』。
「あ…………もう、終わったのねん…」
私は心底、『消去の天才』が欲しくてたまらなかった。



決闘は死神ちゃんの勝利だった。

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