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泡沫の命を宿す者
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泡沫の命を宿す者 1

―我が瞳に写るは、汚れも知らぬ儚げな少女―

何かを訴えかける様なそのつぶらな瞳、今にも囁かんとする様なその真紅の唇、そして透き通る様な白い肌。

まさに夢にまで見た、触れる事も叶わぬと思っていた理想の相手

目の前の少女に心を奪われ、我を忘れて手を伸ばしその頬に触れたくなる。思うがままに抱き締めて汚し、壊したくなる。

少女の心と体、全てを我がモノに…我だけのモノに!!

そんなドス黒い感情が心の奥底から込み上げる。

たとえ、その汚れなき少女が…本来は命を持たぬはずのただの"人形"だったとしても
 
 
 
 

空が落ちたかのようなひどい雨の日。
ある街の片隅、まるで澱のように淀んだ空気の溜まるその一角にある、しかしどこか神秘的な雰囲気を持つ一軒の家のなかに、一人の少年と、女性がいる。
「ひどい雨ね、アル」
窓の外の天気を眺めながら、女性が呟いた。
その後ろで、人形の手を繕っているアルと呼ばれた少年が、興味なさそうに言う。
「阿片は雨が嫌いなのかい」
阿片と呼ばれた女性はさも不愉快そうに振り向いた。
「嫌いよ。外にもいけないし、退屈だわ。アルは構ってくれないし」
「ぼくは雨が降っても、太陽が照っていてもかわらない。ここでみんなを作るだけ」
繕いを終えたらしく、アルは糸をのばして器用に結びをつけると、手元の糸鋏でそれを切る。
彼の手の中には、可愛らしい布製の人形があった。
「ねえアル。それは、ルノスワトゥードの人形?」
そこで初めてアルは、顔をあげて阿片のほうを見た。
「いや、これはお店に並べる子だよ」
「なんだあ、つまんないの」
言葉通り残念そうに、阿片は長い髪を指でいじっている。アルはそんな阿片などお構いなしに、出来上がった人形を愛おしげに眺めていた。

そのとき、入口の扉を開けるときになる、カランという音が聞こえた。
「あれ。お客さんかしら」
阿片が奥の部屋から顔をだして、店内を覗いた。たくさんの人形が陳列された店内に、トレンチコートと帽子の人物がいる。
「やっぱりそうだわ。ちょっと行ってくるね」
そう言って阿片は部屋を出た。アルは相変わらず、作ったばかりの人形を優しく眺めている。
「いらっしゃいませ」
トレンチコートの人物は、店内の人形には目もくれずに、現れた阿片のほうにむかってきた。
「……ここは、人形を売る店か?」
唐突な言葉に阿片は一瞬意味をはかりかねたが、ひとまずこう答える。
「当店は『人形店・Phantom soul』です。お客様の好みに沿った人形を作らせていただきます」
そう言うとトレンチコートの人物は、意味ありげにフッと笑うと、こう返した。
「この店は、『Lnos wotueyd』……、じゃないのかね?」
「え……」

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