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球児の夢
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球児の夢 4

翌日の放課後、葵は一番乗りでグラウンドに到着した。その葵がふとマウンドを見るとボールを握りしめた小林がいた。小林はふりかぶって投げた。捕手はいなかったのでボールはフェンスに直撃した。ボールは威力でフェンスに挟まって落ちない。
「わー凄いね小林君」
拍手しながら葵がマウンドの小林に歩み寄った。
「宇佐見さん、俺…やるよ、野球好きだから」
「よかったぁ、これで初戦敗退はないね」
葵はホッとしたように言う。
「…でも先輩達はどう思うかな」
「大丈夫だよ、今の投球見たら断る理由なんてないもん」

するとグラウンドへ現エースの北山がやってきた。エースとはいっても所詮は弱小高校の投手なので毎試合打ちこまれている程度の低い投手であった。
「あの北山先輩、俺練習に参加したいんですが…」
「フフッ、そんな畏まることはないぜ。ウチは強豪校じゃないんだから練習に出なかったくらいでうるさく言わねえよ」
北山は笑顔で言う。
「そうですか、ありがとうございます」
「よかったね、小林君」
葵が小林の肩を叩く。
「ほらユニフォーム着てこいよ」
「はい」
こうしてメンバーが一人復活した。

練習が始まった。バッティングの練習が始まると一際快音を響かせる選手がいた。二年生で四番を務める中村である。彼は体格から国高のドカベンと呼ばれている(自称)。中学時代は相撲部に所属しておりパワーはチームNo.1だ。しかし選球眼が悪いためそのパワーを発揮しきれていないのが現状だ。そんな中村を見て声をかけた人物がいた。蒲原といい、かつて地方で監督を務めその高校を甲子園に導いたことのある名将だ。甲子園出場の役名を果たし今はこの地元に戻って隠居生活をしている。
「君そのバッティングじゃ駄目だよ」

「は、はぁ…」
練習中に声を外部の人間にかけられ訝しげの中村であったが、蒲原の指導のとおりのバッティングをすると柵越えを連発するようになった。
「やっぱり、君には資質があると思ってたよ」
「はい、どなたか存じ上げませんがありがとうございます」
「では、頑張りなさい」
蒲原はグラウンドから去っていった。入れ代わるように島中監督がグラウンドにやってきた。島中監督はビックリしたような顔をしている。
「今のはあの蒲原さんじゃないか!どうしてここに?」
「中村先輩を指導してくれたんですよ」
葵が言う。
「なんと!監督を退任されたと聞いていたがこの街に住んでおられたのか…」
「あのかた凄い人なんですか?」
「ああ、弱小高校であった北斗高校を甲子園に出場させた名将として名高い蒲原さんだ」
「監督、退任されたということは今はフリーってことですか?」
「多分な」
「監督、その蒲原さんにウチの野球部をコーチしてもらうことって出来ないですか?」
「蒲原さんにウチみたいな野球部を指導してもらうなんておこがましいこと出来ないだろ」
「でもさっき中村先輩を指導してくれたんですよ、興味は持たれてますよ」

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