俺の守り神・ぷらす 17
「水名…強制送還はしたくないの…力ずくで帰ってもらうわ…」
水名の威圧感はお母さん譲りだな、と思った。
「私が勝ったらいいのね?」
「ええ…文句は言わないわ」
水名はプールサイドに上がった俺の隣りまで近付き…
「優…ありがと…♪」
「…ああ」
「それと…協力してくれる?」
「今、さっき言ったこと後悔してる」
「残念♪時は戻せないわ♪」
「神様ならできそうだけどな…出し惜しみしてる?」
「…どうかな?♪」
「これだから神は…」
「…優?」
「…ん?」
「ありがと…♪」
最大の親子喧嘩が開幕した…。
キュイン!!キュイン!!
水名が作った数多の氷の矢が相殺されていく。
相手の矢は…同じく氷だった。
水名のお母さんの名前は…水世…。生粋の水神である。
「水名…いつの間にそんなに強く…?」
「お母様が知らない間に!!」
水名が矢を止めて、氷で作った斧を振りかぶりながら近付く。しかし全く同じ斧に阻まれる。
ガキィィィィン!!!!
「お母様…真似しかできないの…?」
水名が生意気に言った。
「ふふふ…」
その水世の微笑みで分かってしまった。
「違う、ミナ。真似されてるんだ…」
水世の笑みは…余裕の笑みだった。
「さすが優君…お察しがよろしいようで…♪」
「え…何…?」
水名は一人訳が分からないでいる。
「こうゆうこと…♪」
水世の持っている斧が元の5…いや、10倍の大きさになっていた。
「ふふふ…大きすぎたかしら?」
水名は自分の斧を見ながら水世に言った。
「で、でも…!!その体積なら質量も同じで重くなって…」
ヒン…………
風が走った。
あの水世の斧は何かを斬った後だった。
水名の斧は砕けることも叶わず真一文字に斬られ、刃の部分がスライドして床にゴトリと落ちた。
そして水名の体もズルリとスライドした。
バシャァ!!
半分になった水名の体は液状化し、いつの間にか俺の横には息を切らしている水名が立っていた。
「な、なんで…?」
水世は大きい斧を肩にかけながら残酷に告げた…。
「まだ…水名が届いてない領域の力よ…♪」
「届いてない領域…?」
「そう…今の貴女じゃどうしても私に勝てないわ…やめない?♪」
水世からのラストヘルプだった。
「…あの時の力さえ出せれば…」
水名は呟いた。
そう…水名は一回だけその領域に触れたことがある。
火芽と戦った時、水名は人が絶対に届かない力を手にしていた。
「困った娘ね〜…。親の顔を見てみたいわ〜…」
あんただ。
「さぁて…帰る意思は無いみたいね?じゃあ…最終手段ね…優君、避けてね♪」
「なにやらかす気だ…?」
「分からない…」
そして水世の姿が消えた。
ヒン…………
また風の音がした。
「バカァ!!!!」
ダン…!!!!
水名に吹っ飛ばされた。
「いっつ…!!何すん…」
さっき俺がいた所の床はまるで俺を縦に真っ二つにするかのように何かで斬られていた。