Gear〜鍵を成す者〜 22
「…あ、ありがとうございます、このご恩は一生忘れません」
「いいんです、困った時はお互い様ですよ、…友人を待たせているので私はこれで」
リオは満面の笑みを残して男の前から去っていった。
「いい事をすると気持ちがいい」
人込みの中に戻るリオ、するとそこには待っていましたといわんばかりに財布を盗られた女が立っていた。
「お嬢さん、財布…」
「ありがとう坊や」
ザッ、女がそう言うと人込みが一斉にリオの周りからひいた。
「抵抗しないで、面倒は嫌いなの」
市民の姿は消えて、いつしかリオは兵士たちに囲まれていた。
「参ったなあ…」
「分かってるわよね、うちの大切な商人さんから訴えがあったの、知らないとは言わせないわ」
「くっ、どうする…」
リオを囲む兵士たちは間合いをつめていく。
「動くな」
「えっ」
リオの耳には小さい声が聞こえた、その声は頭のなかで響いていた。
ガガガガガ、兵士たちがどよめきだした。皆揃ってリオ後ろを指差す。
「ド、ドラゴンだあああ」
「ひぃぃぃ」
大抵の兵士たちは逃げて行った。しかし、リオの前には数人の兵士たちがまだ残っていた。
「うろたえるな、錬金獣よ、勝てないあいてじゃない、あんたたちは術者を探して捕まえてちょうだい、“この子”は私に任せて」
「了解、ご武運を」
財布の女は頷き、兵士たちを見送る、しかし彼女は白いシャツにジーパン、とても戦う姿に見えなかった。
「不思議そうな顔ね、まぁ見てなさい」
女はリオにウインクをすると地面に両手をついた。
「錬金術が使えるのはあなただけじゃないわ、“トマ”!!」
「ト、トマなの…?」
グゴォォォ、石畳に魔法陣が現われ女を光に包んだ。
「これが錬金術、“ゴールドアーマー”よ、坊や」