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Gear〜鍵を成す者〜
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Gear〜鍵を成す者〜 21

馬車の中で男の声がむなしく響く。


「いいのか、馬車に残してきて」
「いいと思うよ、連れて行くとうるさそうだし、何より、面倒に巻き込まれそうだからね」
赤兎が言って、リオが笑顔で答えた。
賑やかな大通りの人ごみ中を、リオと赤兎が歩いていた。リオの目に映る風景は笑顔にあふれていて、とても戦争をするようには思えないものだった。
「赤兎ぉ、この国はゴンドラだよね…」
「間違いない…はずだ」
「赤兎ぉ、あの子財布すられたよね」
「いや、見ていない」
「赤兎、ちょっと待ってて」
「あ、ああ…」
赤兎が横を見ると、既にリオの姿はなかった。
「自分から面倒に巻きこまれにいったな…」
赤兎は一人つぶやくと少し笑った。
「赤兎…」
「ん、早かったな、さすがは…」
赤兎は振り返り、声の主を見つめた。


「おとなしくして、黙って返してくれたら何もしない」
「ひぃぃ、お許しください、これには理由があるのです」
裏通りで、痩せた髭面の男がリオに捕まっていた。男はガタガタと震えて涙をながしている。
「ん、どんな」
「…私には五人の子供いるのですが、先日職を失い、どうしようもなかったのです」
リオは数度頷くと、ポケットの中から金の棒を取り出して、男に黙ってそれを渡した。
「この財布は渡せませんが、これでしばらくは保つでしょう、そして職を探しなさい」

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