Gear〜鍵を成す者〜 15
「……あ、アデプトですか」うろたえるベルーナ。
「……はあ…上級錬金術師の事ですよ…扉の先にその人がいないと助かるんですが…」シオンは憂鬱そうな顔で扉を見つめた。
「いきましょう、考えても仕方ないです、邪魔をするならぶった斬るのみ」そう言って、ベルーナはウインクして親指をたてた。
ギィ……
二人は大きな扉を押して中に入った。明るかった。
その部屋は壁や床、天井がガラス張りでできていて、巨大な水槽になっていた。
魚が水槽の中を泳いでいる。
「会いたかったよ……シオン」その部屋の一番奥から男の声がした。
声のする所には台に刺さった一本の剣と、白髪頭の男が立っていた。
「私は会いたくなかったわ……カッツ」シオンの眉間にしわがよる。
「邪魔をするなら、斬る……」ベルーナの目つきが鋭くなった。
「ああ、君がベルーナ……久しぶりだね」カッツの目が細くなる。
「お前なんて知らない」そう言うとベルーナは、背中から二本の剣を抜いた。
「君、帰る場所がないんだろ?それは――」
「ベルーナ、あの男の話なんて聞いてはいけません」何かを言おうとしたカッツの言葉を、シオンがかき消した。
ベルーナは剣を一振りすると叫んだ。
「お前に何が分かる!!」ベルーナの白い肌は少し赤くなっていた。
カッツは嘲笑うかのような笑みを浮かべると口を開いた。
「お前の一族は私と、“お前の隣にいる女”が皆殺しにしたのだ」
「え……」ベルーナの目が見開いた。そして、その姿からは闘争心が感じられなくなった。
カッツの口元が笑った。
スッ、ただ立ち尽くしているベルーナに、剣をかざすカッツの大きな影が重なった。
次の瞬間、金属が激しくぶつかる音がして、カッツの影はとおのいた。
「ベルーナ!何やってるんですか、今は戦闘中です、考え事は終わってからにしなさい!!」
ただ立っているベルーナの前に、両手に戦斧を握ったシオンが立っていた。
「……はい」
ベルーナは小さな声でそう呟くと、床を蹴った。
ピキッ、何かがひび割れるような音と共に、ものすごい速さでベルーナはカッツに斬りかかった。
二本の剣がカッツに襲いかかる。カッツは一本の太い剣で、ベルーナの猛攻を器用に防ぐが、反撃できないでいた。