GENIUS 10
「神子さん…その……」
「いいよ…恋には私から言っておいてあげるから」
俺だけ出口ではない方向に向かう。
『O』の部屋の前に着く。
ちなみに『O』となると鉄格子も無く、普通の部屋である。
鉄格子なんて意味無いからだ。
コンコン、とノックをする。
「…………」
「俺だ。無色だ」
「…………」
彼は何も言わずにガチャリと内鍵を外し、ドアを開けてくれた。
そして俺が部屋の中に入るとまたガチャリと内鍵を掛ける。
「元気…か?」
彼はコクリと頷くだけ。
俺と彼の会話はこの繰り返し。
いや、会話と言えるのかも怪しい。
俺が聞いて、彼が頷く。
「そうか…なぁ、外…出ないのか?」
こんな会話、恋さんに聞かれたら殺される。
しかし彼は首を振って否定し、少し悲しそうな目をして俺を見つめる。
「わり…じゃあ行くわ」
内鍵を外し、ドアの外に出る。
「また…来れる時に来るから」
彼はドアを閉めながら、俺に見えるように初めて口を動かした。
その口の動きは…
『もう来るな』
と言っているように見えた。
「俺…凡才だから分かんねぇや」
ドア越しにそう言い、『O』から離れた。
「遅い。死ね」
「すみませんっ」
「じゃ帰ろっか無色くん♪またね恋。次に新しい子入ったら教えてね♪」
「分かった。死ね」
『あいうえお』から出るといつも新鮮な空気のありがたみを知る。
「んーっ、さてと無色くん。どこ行く?ラブホ?」
「帰りますか……」
「分かった♪家で、ってことね?」
「神子さん。死ね」
「冗談よぅ…しかも上司に向かってそれはどうなの無色くん?」
「もちろん俺も冗談です。好きですよ?神子さんのこと」
「え………ら、ラブホ?♪」
「だから行きませんって」
なんだかんだで生神探偵事務所に着く。
「……おかえりなさい」
「ただいま」
「死神ちゃん、明日お仕事ね」
「…………はい」
たった今、佐倉翼の死刑宣告がされたのだった。
「フワァ、ヨク寝タ……ン、ココハドコダ?」
「……おはようございます」
ポツリと女の声が聞こえた。
声のほうへ顔を向けると、そこには若い女がいた。
それも今まで見てきた女とは違う生き物ではないかと思えるほど、綺麗で可愛かった。
コイツは上玉だ。
涎が垂れそうになるのを我慢する。
まだだ…女が油断するまで、あの顔が恐怖で歪む瞬間を待て。
「…オハヨウ。ココハ?」
「………■■■■■■■■■」
あぁダメだ。
もう女の声が聞こえないほど気持ちが高ぶっている。
ついさっき待つと決めたのに、もう待てない。
「………■■■、■■■■■■■」
待てない。
待てない。
待てない。
食べたい。
食べたい。
食べたい。
犯したい。
犯したい。
犯したい。
あの整った顔を恐怖で歪め、女の絶叫をBGMに、無理やり女をグチャグチャにしたい。
俺の××で女の×××を×××××××したい。
「………■■■■■?」
「欲シイ…欲シイ…欲シイッ!!」