PiPi's World 投稿小説

All right
恋愛リレー小説 - その他

の最初へ
 7
 9
の最後へ

All right 9

 それを聞き二人とも一瞬言葉を失う。それはそうだろう、少し異能が使えたところで自分達はただの高校生なのだ。そして実際に被害者も出た。犯人探しなどして、どんな危険な目に遭うかは分からない。
 それでも悟は、反対されても一人で調査をするつもりだった。
 そして、先に口を開いたのは茜だった。
「……そうだね。それに友達が襲われるのを待ってるだけなんて、あたしの性には合わないもん。ね?」
 ぐっと拳を掲げて、とびきりの笑顔を明希に向ける。
「悟……茜ちゃん……二人とも、本当にありがと。私も頑張るよ」
「その意気だ!」
 再び笑顔を取り戻す一同。暗闇の中にほんの少し射した光明のようなものだが、それでも明希には嬉しかった。


「それじゃ、捜査の打ち合わせに入ろう」
 所変わって校内の空き教室。周囲に人がいないことを確認し、悟が口を開いた。
「まずは捜査に必要な人数。これはできるだけ少ないほうがいいよな。
 あまり人数が増えすぎると犯人の警戒に触れる可能性がある。かといって、少なすぎると明希の身辺が守れないし……」
茜もまた、ふーむと腕組して考え込む。
「一騎当千の武闘派異能使い…」
そんな都合のいい奴そうそう居る訳ないだろう…とツッ込む悟。
「居るよ、文系クラブを救った伝説の英雄『ルガーの流』。」
…さくらが芝居がかった口調で重々しく呟く。
「前に体育会系でガラの悪い連中が集まって、部室拡張の為に文芸部を含めた文系クラブに嫌がらせに来てた時期があったの…もちろんアタシは『丁重に』お引き取り願ったけど。」
何がどのように『丁重』だったのか想像はつく。
「連中が次の標的にしたのが漫研…」

…コイツまで呼んだの失敗だったかなぁ…熱っぽく語るさくらに呆れ半分の悟。漫研の目撃証言にさくらの脚色が加わり…要約すると腕力に訴える連中を『西部劇』のように追い払った…そうだ。
「で…?そいつが実在の人物だったとして、会った事もない奴にどうやって協力してもらう?こうするのか?」
なんの冗談か黒板に『XYZ』と書込む悟。
…からから…と何者かが遠慮がちに戸を開け、覗き込む。
「あの〜春日井さん?文芸部の出し物の企画書がまだ…」
瓶底眼鏡だ。多分文書係かなにかで奔走していたのだろう。
「あれ、まだ出してなかったっけ? わたしはもうとっくに提出したと思ってたけど」
「おかしいなぁ、出てるんだったらこの中に――うわっ!」
 抱えていたファイルを無理な体勢で開けようとして派手に取り落とす瓶底眼鏡。
「ああもう、何やってんのよ! さっきぶつかった時といい今といい、何でそう鈍いかなぁ。他の部のと混ざっちゃうじゃないの」
 その言葉で、茜と悟は先程も彼が抱えていた書類を派手にぶちまけていた事を思い出す。同時に茜の視点からは彼の懐から一瞬覗いた封筒が見えた。
(あれって、さっきも彼が大事そうに抱えてたモノよね……)
 何かが引っかかる。だが、漠然としすぎていてはっきりとした形にはならない。
 そうこうしているうちに瓶底眼鏡とさくらはファイルから零れた書類をさっさと片付けてしまう。
「ほら、やっぱりあった。次からはちゃんと確認してから来なさいよ」
「し、失礼しました……」
 そそくさと立ち去る瓶底眼鏡。その後姿を見ながら、茜は厳しい表情を崩さなかった。

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す