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All right
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All right 36

「悪い。気ぃ使わせるな」
「そんなの今に始まったことじゃないだろ。もう慣れてるって」
「……普通、そういうの本人の前で認めるか?」
「ショック療法だと思えばいいんじゃないかな」
「うわ、開き直りやがった」
 そんなことを言い合っていると、悟の気も少し楽になった。
「――ただし、」
 冬は急にまじめな顔で、
「もしも助けが欲しいと思ったら、気にしないで言ってくれよ」
「……」
 悟は言葉を詰まらせた。
 どう答えるべきか。事情を話せば冬は協力すると言いだすだろうけど、巻き込みたくは無い。
 そう思えるくらい冬は大切な友人だ。
 だから、悟は出来るだけ普通の表情を装いながら、
「じゃあ、もしそうなったら、死ぬほど期待してるからな」
「あ、あまり期待されすぎてもそれはちょっと困るけど……、まあほどほどに任せとけ」
「ほどほどかよ」
「うるさいな、大口は叩かないことにしてるんだよ」
「なんだよそれ。頼りねぇ〜」
 くだらない会話で笑いあう。それだけで助けになっている。だから悟は、冬には言わないことにしようときめた。
「そういえば、ふたりともやけに急いでたみたいだけど、この先に何か用か?」
「あ、う、うん。ちょっとね。そんなに大した用事じゃないんだけどね」
「へぇ……なるほどなるほど」
 明希の説明を聞いて、なぜか冬は意味深に笑った。そして悟の方へ顔を向ける。
 その笑みの理由は解らないが、正直、あまりいい予感はしなかった。
 だから、と内心で構える悟に、冬は内緒話をするように、
「悪かったな、邪魔しちゃって」
「いや、別にそんなことはないけど……何だよいきなり」
 冬は明希の方をちらと確認して、悟にしか聞こえないようにさらに声を落とした。
「とぼけても無駄だって。いやぁ、友にようやく春が来たと思うと嬉しいよ」
「は?」
 何だか話の流れがおかしい。季節の話などしていなかったのに、突然何を言い出したのだろうか。
「照れるなよ。こんな先に行くなんて、ふたりだけになりたかったんだろ?」
「……おい」
 そんなことかと悟は頭を抱えた。とんでもない勘違いだ。
「あのなぁ、俺たちはホントに――」
「はは、相変わらず言い訳がヘタだな。出し物に使う予定もないのに、何の用事だよ」
「予定が、ない?」
「ああ。ここからある程度はスキー部のお化け屋敷が続くけど、その先はどこも使わない空き教室ばっかりだったはずだし。だからこそ何教室も使って派手にできるんだけどさ」
 冬は明るく笑い、去年までの教室をまたいでのお化け屋敷のすごさについて説明を始めた。
 冬の説明を聞きながら、しかし悟は別のことを考える。
 つまり、さっき明かりのついていた教室にいた人物は、やはり学園祭に関係のない『何か』をしていたのだろう。それが今回の事件と関わりのあることかは解らないが、行ってみるだけの価値はある。

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