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All right
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All right 3

茜は京をジロっと睨みみける。
「ひっ…!!」
と、京は身を強張らせて悟の後に隠れた。
悟はやれやれといったかんじでため息を一つ付く。
「あたしは一足先に戻るから早く木材もってきてよね!!」
と、言い残すなりシュンと姿を消した。
「恐かったー!!」
茜がいなくなり緊張がとけたのか、京は泣きそうに声を上げる。
「ったく…だから言ったろ、茜を怒らすなって…」
京は涙を浮かべたまま悟の言葉を肯定するようにコクコクと頷いた。
「さぁ!!早く運んじまうぞ!!」

「……重い」
 悟はかなりの数の木材を一人で運びながらつぶやいた。ただ、一人とは言っても、手助けはいる。
「京のゴーレムいなかったらキツかったな、こりゃ」
 軽く振り向くと、言葉の通りにいくつかの木材が悟の運ぶ木材を支えている。京が操りきれなかった木材を、ゴーレムと化した木材に手伝ってもらい運搬中なのだ。
「で、京はどっかいったし……! お互い上が気ままだと大変だよな?」
 木材と働き、木材にグチる男、白瀬悟。
 やがて再び進むために振り向いた悟は、少し離れた位置に見知った顔を発見した。
「……明希?」
 俯き気味で顔は良く見えないが間違えるはずもない。悟の幼なじみの出雲・明希(いずも・あき)だ。
 ただ、向こうはこちらに気付いていないらしく、わずかに俯いて壁にもたれ掛かるように立っている。
 その姿に、悟は嫌な予感がした。普段は活発で茜と並ぶスポーツ少女の明希だが、本当は心臓病を患っているため、物体の流れを操る『流動』の異能に目覚めなければ、学校など来れず今もベッドの上だったはずなのだ。
 彼女の異能の触媒となるのは、胸元に光るブローチの中にはめ込まれた小さな宝石だ。対象に近ければ近いほど効力を発揮しやすいため、心臓に近い左胸に止めてある。
 心臓病を抑えるために絶えず異能を発現させ続けなければならないため、彼女が他の対象に対してその力を使う事はほとんどない。いや、出来ない。

「明希、どうかしたのか? 具合でも悪いのか?」
 恐る恐る声をかけると、明希はびくりと肩を震わせてこちらを振り返った。心なしか顔色が青い。
「悟……ううん、大丈夫。『こっち』は」
 明希が指差したのは左胸。発作ではない、ということだろう。代わりに、ポケットの中から皺だらけの封筒を取り出す。
「今朝、ロッカーにこんなものが入ってたの。悪戯だとは思うけど、なんだか怖くて……」
「見せてもらっていいか?」
 こくん、と頷く明希。それを確認すると、悟は封筒の中に入っていた一枚の紙を取り出した。

【祭の陽が墜ち
 焔が天を焦がす刻
 汝が胸の光を
 頂戴しに参上す

 是 戯言に非ず
 陽の昇る前に数度
 其の証拠を示さん

 怪盗X 拝】

「――脅迫状? しかしこれはまた随分陳腐な文句だな」
 どこにでもあるようなコピー用紙に、新聞か雑誌から切り抜いたであろう文字を貼り付けてある。ご丁寧な事に、その原稿をコピーしたものらしい。
「どうせ、どこかのバカがラブレターでも書こうと思って方向性を間違ったんだろ。気にすることないって」
「そう、だよね。悟が言うんだから大丈夫な気がしてきたよ。ありがと」
「礼はいいからさ、出来たらこの木材、一つ持ってってくれないか? 流石にきつくなってきた」
「何よ、淑女(レディ)に力仕事させるわけ?」
「誰が淑女だ、誰が」
「言ったな、このっ!」
 ふざけ合いながら教室へと向かう二人。2人がこの脅迫状を放置したことを悔やむ事になるとは、今の彼らに知る由もなかった。

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