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All right
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All right 19

「…そうか。それがお前の本音なんだな?分かってるさ、自分が無力なことくらい…!!」 駆け出す悟…
「そんなつもりじゃ…無かった…の…に…」
 悔やんでも、時は戻らない。それは、自然の摂理をねじ曲げられるこの学園でも絶対のこと。
 皆、なんと声をかければいいのか解らないまま黙っていたが、明希が一番に我に返り、
「あ、あの、私、悟連れ戻してくるねっ」
「え? ちょっ、ひとりは危な――!」
 さくらの言葉を最後まで聞かずに、明希はその場から離れ悟を追い掛けていってしまった。
 突然のことに茜と流馬はろくに反応できなかった。しかし、さくらだけはすぐさま振り返ると流馬を指差し、
「ちょっとあんた、何ボーッとしてんのよ! 早く追い掛けなさいっ」
「え……? あ、えっ、ハイッ!」
 さくらに一喝されて、慌てて返事をする流馬。そして走りだし、
「――って逆よ逆! そっちじゃない!」
 すぐに方向転換し、足音が遠ざかっていく。
「まったく……」
 足音が廊下の向こうに消えると、さくらは疲れたように吐息ひとつ。そして茜に視線を向けた。
 茜は咄嗟にその視線から逃れるようにうつむいた。この状況でさくらの顔を見るなんて出来なかった。憤りか、軽蔑か。きっとどちらかの表情で自分を見ているのだろう。そうされるだけのことを、自分はしてしまったのだから。
 だが、さくらは近づいてくる。ゆっくりとした足音でそれが伝わる。
 ……やだ……。
 思ってもさくらは止まらず、伏せた視界に内履きの爪先が見えた。もう目の前にいる。
 ……やだ、何も聞きたくない……!
 さくらがこちらに手を伸ばしたのが気配で解る。何をするつもりなのか。茜は怯えたように耳を両手で塞ぎ身を固くしたが、
「……疲れたよね。ちょっと休もう?」
 後ろ髪に手を差し込まれた感触とともに、頭を撫でられた。
「茜は頑張ってるよ。みんなちゃんと解ってる。だから、もっと力を抜いていいんだよ?」
 きっと責められる、そう思っていた。皆の協力が必要なときに、自分のわがままとも言える感情で和を乱したのだから。そのせいで明希の命が危険にさらされるのに、だ。
 だけど、塞いだ耳に聞こえるさくらの声は、驚くほどに優しかった。
 その言葉と頭を撫でられる感触に、意識しなくても強ばっていた身体から力が抜けていくのが解った。同時に心の中で何かが動き、それを堪えようとして失敗して、ひっと小さな嗚咽が漏れる。
 しかしさくらは何も言わない。
 そのことに、あ、と思う間もなく涙が溢れた。

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