一年に一度の恋 7
もっと早くに気付くべきだった。
アイツに似ていただけの偽物を追っていた事に。
事実そこにアイツはいなかった。よく似てはいたものの、やはり細部は違っていた。
あたしはとぼとぼと家路に就き、ぽつぽつと降る小雨を浴びながら、アイツを思い涙した。
そいつってだれ?アイツって誰なんだ?私は誰なんだ?……いつまでも同じプロローグで回っているジレンマから解放されたいっ!いつまでも幻を追いかけている自分!泣きたくて〜笑いたくて〜ほんとの自分伝わらなくて〜言いたいこと言えないけどここにいるよ〜……?
もうわけわかんなぁーい・・・
自分がわからなくなってその場所にいられなくなって
私は逃げたした。。。
どれくらい走っただろうどれくらい歩いたのだろう
誰か私を見つけて。。。
するとどこからともなく音楽が流れて来た
音のする方に近ずいてみると。。。
そこには…
ミュージシャンが一人歌っていた…
「泣いたら〜あかん♪泣いたら〜あかん♪ かな〜しく〜なぁ〜るだけ〜」
どことなく惹かれる歌声…
私『お兄さん名前は?』
ケ「ケンジや」
ケ「お姉ちゃん早く家帰りな…」
私『えっ…なんで?』
私は家に帰る気分ではなかった…
ケ『これから大変な事が起こるんや!』
真面目な表情で言った…
遠くから不気味な音がしだした。
シュゴォ―シュゴォ―
シュゴォ―シュゴォ―
深い霧の中から何やら大きな物体が…
私「んっ?あれは何?」
これが1999年大晦日の出来事…。
肌に、針の様に突き刺さる冷気。あれは1999年12月31日の事。
白い煙が辺りを一面に立ち込める。
黒い『何か』が嫌に際立って見える。
周りからは、この空気にも似た甲高い寒い声が共鳴しはじめる。
さっきまで歌ってた兄さんを見ても、意味深な笑みを浮かべながら煙の中の黒い固まりを睨んでいた。
あたしを混乱と恐怖に落とし入れるには十二分だった。
けど、何故か身体はまるで氷の様に硬直して、動けない。
いや。
動きたくなかったのかもしれない。