一年に一度の恋 1
あたしには離れられない恋人がいる。
そいつはあたしを暖めてくれる――
そいつと出会った日の事、今でも鮮明に覚えているよ。
何から話そうか
−−そう
あれは色付く木々に朝露が反射し、目を細めるほどに空気の眩しい秋晴れの休日、特に当てもなくあたしは街へと繰り出した。
ヲタクをはばかり、そそくさとAKBの街を通り過ぎようとしたその瞬間、許可なくあたしの視界に映り込み、あたしの足を、時間を止めた そいつ。
あたしって、人一倍プライドが高く 物怖じしない性格
っていうのは建て前で
実際は…
建て前のプライドが邪魔をする、故に今までその事は家族にさえ隠して生きて来た
恥だと思ってたんだよね……。
そいつと出会い、あたしは変わった
そいつは、そんなあたしの糞みたいな誇りを、容赦なく切り捨てた…。
「ねぇねぇ、アレちょーヤバくな〜い?」
あたしの横を通り過ぎたギャル風の女がそんな事を言いながら奴を見ていた。
奴は渡さない。
このあたしの眼鏡にかかった獲物をそう簡単に渡してたまるものですか!
あたしはギャル風味の女を横目で睨みつつ、追い抜いた。
そして、奴の前へと向かったのだった。
目の前で見る奴はとても輝いていた。アイドルよりも韓流スターよりもキラキラと…。それはなんとも言えない、言葉にはできない輝きだった。
しばらくの間、あたしは奴を見つめることしかできなかった…。