一年に一度の恋 2
…どれほどの時間が経っただろうか…気付けば辺りには夕闇が訪れようとしていた。
奴はまだそこに…あたしはどうしようか迷っていた。
気付けばギャル風味の女はいなくなっていた…。しかし、ミニスカートにフリフリエプロンのメイド姿の女があたしと奴に近寄ってきた。
「ギザかわゅすぅ〜」
あたしはジロッとメイドの女を横目で見た…
見覚えのある顔…。
そうだ!この子はさっき駅で転んだあたしに優しく声をかけてくれたメイド喫茶のチラシ配りの子だ。
ちょっと心が傷んだ…。
でも、奴をこの子に渡す訳にはいかない!
奴は久しぶりにあたしに輝きとトキメキをくれたのだから…。
あたしは再びメイド姿の女を睨んでいた。
これほど感情をあらわに見せたのは、いつ振りだろう…
あたしの脳裏に、遠い過去の記憶が少しづつ蘇ってきた。
━━━そう、あれはあたしが3才の時だった…。
あたしには大好きなキャラクターがいた。ヒーローだけど脇役…あたしにとっては大ヒーローだった。
本当に勇気100倍くれたんだ!!
みんなはやっぱり主人公が好きだったけど、あたしは違う。そのキャラクターのよさはあたしにしか分からないと思う。
「お前、カレーパソマンなんか好きなのかよ!!」…
そう言われてもめげなかったんだ。
いけない
あたしったらまるでヲタクじゃんね…
ふと我に返ったあたしを、きょとんとした目で不思議そうにメイドは見ていた
『あの、もしかしたらさっきの……。具合はもう大丈夫ですか?』
この人、なんて綺麗な目をしてるんだろう
あたしの中で、何かが複雑にもつれ始めた。