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遠距離恋愛
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遠距離恋愛 10


「ええと…
自分のことより相手のことを聞く、
ふられた話はきちんと返す、
できるだけ早く返事する、
一行メールは禁止、
…こんな感じか?」
懸命になって頭の中に入れた項目を整理、反芻する智。
「はは…そんな生真面目にならなくても…」
ちょっとやりすぎたかな、と思う圭介。
「俺、一目惚れより性格とか中身が大事だと思うから…!頑張るよ!!」
さっきまで飲んでいたはずなのに、
すっかり酔いが醒めてしまった二人。
「ごめんな、圭介。でもありがとう!
ここは俺がおごるよ」
「お、おお。そうか?じゃあ…ごちそうさま」
「じゃあ、飲み直すか?俺の部屋で」
二人は居酒屋を出ると、智の部屋に向かった。



その頃の綾は、というと。
「…何だか眠れない…」
ベッドに入って、お気に入りの音楽を聴いて、
それでいつもはゆっくりと眠りに落ちていくというのに、今日に限っては眠れない。
(ちょっと強引にメール終わらせちゃったからかな。
本当はもうちょっとお話したかったのに…)
どうしても他人に対して一歩引いてしまう綾は、いつも後から後悔してしまう。

本当はもっと自分に構ってもらいたい、
本当はもっと自分のことを話したい、
本当はもっと相手のことを知りたい、
本当は…!

そこまで考えて、綾は跳ね起きた。

(まさか、まさか!)
低くかけたお気に入りの曲が聞こえないほど、自分の心音がはっきりと聞こえる。
(私が、そんな、まさか!)
自分の心の声が叫んだ言葉を否定しながら、綾は自分の肩をぎゅっと抱いた。
今日はいろいろなことがあったから、きっと疲れているんだわ、と自分を無理やりに納得させ、再びベッドの中に潜り込む。
(そうよ、きっと疲れているだけ…)
綾は静かに目を閉じた。


その頃智は、一気に飲みすぎて床に寝てしまった圭介に毛布をかけていた。
「何だよ、圭介…お前らしくないな。いつも布団じゃなきゃ寝られないとか言うくせに」
そう言いながら圭介の頭にクッションも当ててやる。
「…う〜ん…何の用だったんだよ、サキ…」
「え?」
起きたのか?
驚いて圭介を見ると、毛布を引き寄せまた寝息を立て始めている。
(寝言、か)
智は圭介を起こさないように圭介から少し離れたソファに腰掛けた。
(圭介の彼女って…サキって名前だったんだ)
聞いてはいけないことを聞いてしまったような感じがして、少し困惑したのだが、
(でも一番好きだった彼女から電話が来るだなんて、全く羨ましいよな〜)
とも思う。
(俺の携帯はメール以外滅多に鳴らないもんな)
そう思いながら、智は自分の携帯を手にした。

携帯を手にした瞬間、今日の綾とのメールのやり取りを思い出した。
「…!あれは俺が悪かったのか」

綾は良いことがあった、とメールしてきたのに。
きっと誰かに話したかったはずなのに。
楽しい気持ちを分かち合いたいと思っていたはずなのに。
それなのに。
さっき圭介が教えてくれたこと、
今の智にはとても良く分かる。

「綾さん、まだ起きてる?起きてるならメールしようよ!綾さんの“良いこと”聞きたいよ!」
智は急いでメールを作り、送信した。
返信があることを祈りながら…。

ゴロン―。

寝返りをうつ。そして、また反対方向へ向き直る。
「だめ!やっぱ眠れない」
綾はベッドから身を起こし、髪を掻き上げる。
ふと携帯を見やると、折り畳んだウインドー画面が光り始めた。

―[メール受信中]

綾は着メロが鳴るのよりも早く、携帯を広げる。
「…智さん?」
智からのメールに綾は喜びを隠すことができず、思わず微笑んだ。

「ごめんなさい!あんな終わり方して。気になってる人にまた会えたの…それだけなんだけど、誰かに聞いて欲しくて。メールありがとう!すごく嬉しい☆」

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