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遠距離恋愛
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遠距離恋愛 11


「これでよし、と。」
綾は送信ボタンを押す。
安堵からか喉が渇き、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、一気に飲み干す。すると、なんだか落ち着いて、また微笑んだ。


「間に合ってよかった…」
一方、綾からの返信メールを確認した智は、ホッと胸を撫で下ろし、すぐさま返事を出す。



その後もメールのやりとりをして、“また今度ね、おやすみなさい。”と今日の終わりを告げた。

グー…グォー…ゴー…

隣から、まるで地響きの如くイビキが聞こえてくる。
変則的な音の響きに思わず笑ってしまう。
「オマエのおかげだな。」
圭介の鼻を摘み、呟いた。
当の圭介は、フガフガと苦しそうにしている。

「あ、わりぃ!」
慌てて手を離すが、起きる気配は見られない。智はその様が可笑しくて、渇いた笑いを漏らす。心境の相乗効果もあってか、穏やかな笑いがしばらく途切れることはなかった。


―翌日。

「なんか昨日…すっげー苦しい夢見たんだけど…」
目を擦りながら、圭介が話しかけてくる。
「ククッ…」
ちょうど腕時計をはめていた智は、昨日の出来事を思い出して、思わず笑ってしまう。
「…もしかして、うなされてたとか?」
「別に〜。」
ちょっとした形勢逆転。
寝言のことは黙っておくか〜。なんかあった時の切り札に…と少々セコイ気はしたが、滅多にない圭介の隙を垣間見た気がした。



「咲…さん?」
綾が小首を傾げ、呼びかける。これで今日は3度目。
「……ん、なに?」
「コーヒー、5番にお願いします…」
「…あっ!ゴメンゴメン。すぐ持ってく〜!」
そう言うと、慌ててテーブルに向かっていく。

「マスター、今日の咲さん変です。私ならともかく、咲さんがボーッとしてるなんて…なにかあったんですか?」
「いや、正確に言うと昨日の休憩後から、なんか様子がおかしいんだよ。綾ちゃんは元気いっぱいだね。」
「はいっ!」
「ハハッ、対照的な二人だね…ちょっと咲ちゃんには話を聞いてみるよ。」



「じゃあ、頼んだよ。この時間帯はお客も少ないし、ゆっくりしておいでね。」
「は〜い!じゃ、行ってきますね〜。」
綾は元気良く、店を飛び出していった。

今日は朝からなぜか同じメニューが立て続けにオーダーされたため、いくつかの食材が残り僅かになった。
そのため、綾が買い出しに駆り出されることになったのだ。普段は食材がなくなると、そのメニューはお断わりしているのだが…

「すいません、私のせいで。綾ちゃんにも仕事増やしちゃって…。」
買い物の意図が自分に向けられたものだと察して、咲はカウンターに腰掛けた。

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