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遠距離恋愛
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遠距離恋愛 4


(アレ?開店前なのに…)
綾は首を傾げた。
年は綾と同じかもう少し上だろうか。若い男が少し眠そうに奥のテーブルに近づいて行く。いつも席が決まっているようだ。

「おはよう。いつものでいいかな?」
「おはようございます。ふぁ〜…お願いします…」
あくびをしながら、席に着こうとし、店内を一周見回した。まだ早いこともあって、店の看板や今日のメニューを告げる黒板がドア付近に置かれ、そして綾の座っている席の隣には制服が椅子に掛けられている。

そして綾がこの店の従業員だと気づいたのだ。
「…え?てっきりお客さんかと…開店前、でした?」

ようやく状況を把握したらしい彼は、すっかり目が覚めたようだ。外から見たら、綾は普通の客に見えるに違いない。それで入ってきたのだろう。

マスターはそんなことはお構いなしにコーヒーとトーストを運んできた。
「別に構わないよ。いつも来てくれてるんだしさ。でも今日は早いんだね。」
マスターはそう言うと、カウンターの中に入っていった。
「今日は朝から仕事が入ってて…すいません、気がつかなくて。」


綾はとりあえず紅茶を口に含み、そのやりとりをしばらくの間、ぽかんと見つめていた。

(常連さんか…でもあんま見たことないかも。)
彼は出されたものを黙々と口にしている。席はカウンターから離れているが、念のため小声でマスターに問い掛けた。
「…マスター。えっと、あの人は常連の方なんですか?私、見たことないんですけど。」
「週に2〜3回は来てくれてるよ。あ〜、そういや綾ちゃんの休憩タイムに来ることが多いかな?」
「そうだったんですか。」
「なに、気になるの?」
マスターが穏やかに笑いながら聞く。

マスターはなんでもお見通しである。照れ屋の綾が客に興味を持つことは少ない。このカフェに入るときも『こんな自分を変えたい』と言っていたほどなのだ。

「…マスターの意地悪!」
綾は口を膨らませた。
でも自然と興味を持って見ていたことは確かだ。なにがそうさせたかはわからない。
「まぁ、そう言わないで。ほら、お客様お帰りだよ」
マスターに促され、レジに向かう。
「は〜い。すみません、ちょうどですね。ありがとうございました〜!」
「どうも、開店前にすいませんでした!」
そう言うと、お店を出ていった。


「ほら、綾ちゃん。早く食べないと開店の準備に間に合わないぞ」
綾はその日、大好きな朝ごはんをゆっくりと味わうことはできなかった…


「まだ開店前だったか〜。あの女の子、新しい子かな。結構かわいかったな〜」

今日、智はいつもより早めに家を出た。打ち合わせが入ったためだ。朝が苦手なため、まだ頭が働かなく、失態を曝してしまった…
しかし、見るところは見るのが男の性。それが余計に悔しいようだ。

(あ〜、かっこわり〜。)
智はバツの悪い気分のまま、駅へと向かい、会社へ急いでいった。

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