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遠距離恋愛
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遠距離恋愛 3



綾とのメールのやりとりが終わり、ソファに座った智は携帯をテーブルの上に置く。
「良かった〜!初日から『おやすみ』言えなかったらどうしようと思った…一応公約だし……で?今日の俺の寝床はこのソファなのか?」
既に智のベッドで気持ち良さそうな寝顔を見せる圭介を見ながら、つぶやく智なのだった。


次の日から、綾と智はほとんど毎日といっていいほどメールを交換していた。

「こんばんわ!最近友達来てる?」
「こんばんわ。あいつはここのところ、残業とか言ってたよ。おかげで静かな毎日を過ごしてるよ!」

お互いにだいぶ話をしているものの、核心をつく話はあまりしていない。結局のところ、今何してる程度の話や圭介の話題が出ることが多い。もちろん、圭介自身はふたりのやりとりを知るはずもないのだが…


(そういえば、お互いの事あんまり話してない…)

綾も気になっていたが、顔も知らない相手にどこまで自分を曝け出していいかわからないでいた。話し相手が欲しかったはずなのに、どうしても堅くなってしまう。
「ふぅ…むずかしい」
携帯を片手に悩んでいた。

 一方…

やはり同じく智も同じ思いでメールを返していた。綾があまり干渉するようなことを聞いてこないため、話を合わせしている。何度かのやりとりで、綾が純粋に話し相手を欲しがっている、そう察知したのだ。


智は思う。
このまま綾の良きメール相手でいようと。
綾が綾自身のことを自ら進んで話したり、自分のことを聞いてきたりするまでは、決して行動を起こさないと。

「でも、正直、綾さんのこと気になるんだよな…」

そんな気持ちを押し殺しつつ、今日も綾に『おやすみ』メールをし、智は眠りについた。


ある日の早朝、綾は少し早く職場である喫茶店に出勤した。
喫茶店…カフェ、といっても小さい店で、マスターと綾と、それから先輩である咲の三人で営業している。
今日のモーニングは、メイプルトーストと紅茶のセット。
これは綾が一番好きな組合せであった。

「マスター、おはようございま〜す!」
綾は元気良くカウンターにいるマスターに挨拶をした。
「おはよう、綾ちゃん。そろそろ来ると思ってたよ。」
そう言うとマスターは出来立てのモーニングセットを綾に差し出した。
「さ、温かいうちにどうぞ。」
マスターは綾がこのメニューの日だけ、朝ごはんを食べずに早く出勤してくるのを知っているのだった。
「いつもすみません…じゃあ、いただきま〜す!」

今日の紅茶はダージリンかな、と思いながらティーカップに綾が手をかけた時、

カラコロ…

お客さんが入って来た。
開店にはまだ早いのだが、マスターは
「いらっしゃい。」
と出迎えた。

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