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遠距離恋愛
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遠距離恋愛 20

 ピッ。
 咲は携帯を折り畳むと、手帳を取り出し、明日の数字部分に、赤ペンで大きく丸印をつけた。

「…3年ぶり、か。」
 頬杖をつき、手帳の中にある一枚の写真を眺める。
あまり写真が好きではないと豪語する圭介との唯一のものだ。写真の中の咲はとびきりの笑顔をしている。
「明日も負けないくらい、笑顔でいくからね!」
 咲は写真の圭介に語りかけた。
「綾ちゃん、お願いがあるんだ。ちょっといい?」
 綾は真面目な顔つきで話しかけてきた咲に対し、今まで緩めていた顔をぐっと引き締める。
「何かあったんですか?」
 周りを気にして、小声で質問してみた。
「あ、そんなに深刻なことじゃないの。明日のシフト代わってくれないかな、と思って。」
「いいですよ!」
 綾は明日、特に予定もなかったため、ふたつ返事でOKした。
「あ、もしかして…デートですか?」
「まあね。」
 咲はにっこりと答えた。その笑顔はとても可愛らしくて、綾もつられて思わずにっこり微笑んだ。
「ありがとう!今度綾ちゃんがデートの時は、私代わってあげるからねー。」
にっこり微笑みながら、咲が言う。
「えっ!そ、そんな…そんな相手いませんっ!」
真っ赤になって反論する綾。
「そうかな〜?近いうちにメールの君からお誘いあるかもよ〜?」
「ある訳ないですー!もうっ!咲さんったら、私の事からかって…」
ぷくっと頬を膨らませた綾がかわいらしくて、咲は微笑んでしまう。
「ふふ…ごめん、ごめん。じゃあ、明日よろしくね!」
「はい!」
綾は、本当に嬉しそうに微笑む咲が少し羨ましかった。
いつか、自分もそんな風に微笑むことができる日が来るのだろうか、と…。

今日もいつもと同じに一日が終わっていく。
ただ一つだけを除いて…。

「智さん、こんばんは!明日もモーニングコール必要ですか?」
綾はお風呂上りに、思い切ってそうメールをしてみた。
(私、ちょっと大胆かなぁ…?)
そう思いながら、髪を乾かす。
朝の智の温厚な声がまた聞きたい、と思ったのだ。
正直にそうメールすればいいものの、
今朝初めて声を聞いただけなのに少し馴れ馴れしいかと思い、こんなメールにしてみたのだ。
恥ずかしがりの綾にしてみれば立派な成長でもあるのだが…。
程なくして智からメールが返信されてくる。


「綾さん、こんばんは!実は明日もお願いしようかな、って思ってたんだ。ありがとう!」
智からのメールを読んで、綾はほっ、とした。
自分一人で舞い上がってあんなメールをした手前、実は断られたらどうしよう、と思っていたのだった。
智と同じ気持ちでいたということが分かり、綾は嬉しさと共に、心が安らいでいくのを感じた。
「こちらこそありがとう!何時に起こしますか?」
嬉しさのあまり、綾はすぐにメールを返信した。



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