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遠距離恋愛
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遠距離恋愛 19

「あ、そろそろ準備しなくちゃ!」
「あっ…ごめんなさい。」
「謝らなくていいよ、俺が電話して、って頼んだことだし。」
「でも…」
「いいのいいの。」
「じゃあ、電話切りますね。」
綾が行ってらっしゃい、と言い掛けた時だった。
「綾さんの声、すごくかわいいね〜!俺今日一日頑張れそうだよ!ありがとう!」
「え…」
「じゃあ、行ってくるね、綾さん!」
「…はい、行ってらっしゃい…」
「またね!」


ツーツー…

(かわいい、って言われた…!)
実は綾は、かわいいとあまり言われたことがなかった。
まだ顔も分からない相手に、声だけでかわいい、と言われたことで顔が真っ赤になってしまい、次の言葉が出なくなってしまったのだ。
(智さん…)
そのまま綾は携帯を握り締めたまま、ぼーっとしていたのだった。

「あっ!私も仕事行かなきゃ!やばっ、もうこんな時間〜。遅刻しちゃう!」
時計を見ると、智との電話を終えてからずいぶんと時間が経ってしまっていた。
綾は慌ただしく準備を整え、家を飛び出していく。
その間も智の温厚な声が耳から離れず、なんだかくすぐったいような気持ちのまま、店へと走っていった。

「綾ちゃん…何か良いことあったでしょ!」
咲が綾の顔を覗き込みながら話しかける。
「えっ!…えっと…」
どもる綾。
「綾ちゃん、顔に出てるよ。」
コーヒーを淹れながらマスター。
「…出てますか?」
「「出てる!!」」
「二人一緒に言わなくても…」
苦笑する綾だったが、その後二人に事の顛末を根掘り葉掘り聞かれる運命なのは目に見えていた。
「はい、綾ちゃん〜お話しましょうね〜!」
にっこり笑う咲が少し怖い綾なのだった。

一方智は、通勤中ずっと笑顔のまま歩いていた。
周りの通勤客が訝しげに智のことを見ていたりするのだが、気にならない。
(…綾さん…かわいいなぁ…)
智もまた、耳から綾の声が耳から離れずにいる。
(明日もまた朝に話したりできるかなぁ…)
そんなことを考えながら、会社へ到着した。
「お、何かいいことあったな?」
智の直属の上司が声を掛けてきた。
「おはようございます!いいことあったんですよ〜!おかげさまで!今日も頑張るぞ〜!」
いつになく、朝からテンションが高い智に上司も少し驚いている。
「お前には何も世話してないけどな。じゃあ、今日も頼むぞ。」
「はい!」
智は自分の机に座ると、すぐに仕事に取り掛かった。


 お昼をだいぶ回った頃、咲は隣室で遅めの休憩をとっていた。

 ピッ、ピッ。
トゥルル、トゥルル…

 この間の再チャレンジにすごく緊張していた。

『もしもし?』
「あ、あのっ」
 声が震えている。
『…咲だろ?どうした?』
「圭介…よくわかるね。」『なにが?』
 私の声。今、“あの”しか言ってないよ?
「なんでもないよ、ふふ」
『なぁ、明日、飯食いにいかないか?』
「…いいよ。私もそう言おうと思ってた。」
 思いもかけない誘いに、咲は震えながらも、誘いに応じた。私たちの空白はどれだけ埋めれるだろうか?そう思いながら。

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