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遠距離恋愛
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遠距離恋愛 18


折り返し届いたメールを読んだ綾は、ふぅ、と息を吐いてベッドへ仰向けに転がった。
「緊張する…」
綾にしては、相当勇気がいるメールだった。
自分からメールだけの友達を募集した手前、なかなか智からのメールに素直になれなかった。
本当はもっと智のことを知りたい。
メールの世界だけじゃなく、現実の世界でも友達になりたい。
いつの頃からか、綾はそう思うようになっていたのだった。

「じゃあ、また明日ね!必ず電話します。おやすみなさい☆」
綾は智にメールを送信すると、部屋の電気を消してベッドに入る。
(明日はうまく話せるかな…)
そう思いながら目を閉じた。


ピピピピピピ…!!
「ん…もう…朝…?」
智との約束の時間に30分前。
綾の目覚まし時計が部屋に鳴り響く。
「はいはい…起きますってば…」
ベッド脇のテーブルで鳴る時計を綾は手に取ると、スイッチを切る。
「ん〜…」
そのまま時計を抱いたまま、また横になり、目を閉じる…。

そのまま3分経過。
♪〜♪〜♪♪〜
「!!!」
今度は携帯の目覚ましが鳴る。
綾は慌てて携帯を手に取り、開き、耳に当てる。
「えっ?は、はいっ!もしもし…?!」
当然、誰からもかかっては来ていないので、携帯からは『ツー』という音しか聞こえてこない。
「…えと…朝、かぁ…」
まだぼーっとした感じではあるが、綾はベッドから這い出した。

実は綾は低血圧症で、朝はとても弱い。
少なくても起きる予定時間の30分前には、目覚ましの類を何個かセットしておかないとちゃんと起きられない。
今日は2回目で何とか起きたようだ。
そのまま台所へ行き、水を1杯飲む。
ゆっくりと意識がはっきりしてくる。
「…あ。智さんに電話するんだった…!」
急にどきどきしてくる。
「最初になんて言ったらいいかな〜?普通におはよう、とかでいいのかな?それとも…?」
パジャマ姿で部屋をうろうろし始める綾。
時間だけが過ぎていく…

そうして何も考えがまとまらないまま、約束の時間。
「きゃー!時間だー!!えっと、とりあえずは起こさなきゃ…」
慌てて携帯を手に取り、智の電話番号を呼び出す。
(上手く話せますように…!!)
綾はそう祈りながら、通話ボタンを押した。



「…もしもし?」
5回目のコールで男の人の声がした。
綾が思っていたよりは、少し高い声。
きれいな声、とそう思った。
「えっと…おはようございます…綾です。」
「えっ?綾さん?!本当にかけてくれたんだ!ありがとう!」
智の声が急に大きくなる。
「わー…感激だなぁ…本当にうれしいよ」
「どういたしまして…」
「本当にありがとう!」
朝から元気な人だな、と綾は思う。
「あ、綾さんにまだ挨拶してなかったね。」
「え?」
「おはようございます。それと声でははじめまして、智です。」
「あ、こちらこそ、はじめまして。綾です。」
「何だかちょっと緊張するねー。綾さんもそう?」
「はい…私、上手く話せてますか?」
電話の向こうでくすっ、と笑い声がした。
「綾さん、面白いこと言うねー!大丈夫だよ。」
「そ、そうですか…?」
「うん、大丈夫大丈夫!」
智がそう言ってくれたことで、綾はずいぶん気持ちが楽になるのを感じた。
「私…心配だったんです。智さんとお話するのが」
「え?どうして?」
「私人見知りするし、緊張もするし…」
「それ、最初は誰でもそうだよ。俺だってまだ緊張してるしね」
「そうなんですか…?」
「そうだよ!だから心配することなんかないよ。」
「智さん…」
「ん?何?」
「ありがとう…」
綾は嬉しくて、少し涙ぐんでいた。
初めて話した人に、そう言ってもらえたことが嬉しかった。
「綾さん」
「はい?」
「もし良かったら、またこうして電話で話できないかな?」
「はい!お話しましょう!」
「良かった…朝から断られたらちょっとショック大きかったかも…俺。」
「ふふ…」
つい、笑ってしまった。
自然と笑顔になっている綾。
この人とだったら、メールでも電話でも長くお話できそう、と改めて思った。

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