はみんぐデイズ 9
あたし達のスプーンは話に夢中で止まっていた。
そんな時ヒナのスプーンから緑色の丸い物体がテーブルの上に転がり落ちた。
グリーンピースだ。
あたしは拾ってやろうと手を伸ばした時にミツルの様子がおかしいことに気が付いた。
顔が真っ青になって、唇が震えている
「どうかしたか、ミツル?」
「グ、グ、グ、グリーン…ピース……」
そう言い残してミツルは床に倒れた。
その後目を覚まさなかったミツルをヒナが風で保健室まで運ぶことになった。
その時ヒナがグリーンピースを見て唇を歪めていたのをあたしは見逃さなかった。
それはまるで…悪代官が何かを企んでいるような顔だった。
「それじゃ…あとは先生に任せてね」
保健医のクリス先生がミツルを寝かしながら言った。
ミツルが倒れた理由は、何らかのショックによるものだったらしい。
でも…グリンピースって言ってたよな…?
「ハリ、帰るよ〜?」
「あ…あぁ」
あれは気のせいだったのか?
そんなことを考えていると、ヒナがあたしの顔を覗き込みながら言った。
「ハリも気分悪いの〜?それともZ以下君が心配?」
Z以下って…なんだかミツルが可哀想になってきたぞ?
「ヒナ…ミツルの名前くらい覚え…」
「なんで?」
……。
…ミツル…ごめん。
あたしはヒナには絶対勝てない。お前はZ以下君のままかもしれない。
取り合えず頑張ってみるけどな!!
「さ、さすがにZ以下は可哀想だから…さぁ…」
「…ふ〜ん」
しばしの沈黙。
ヒナは少し考えてるみたいだ…いい方向に行くことを願おう。
「じゃあクラスメートΣってどうかな〜♪」
「Σ(シグマ)ぁぁ!?」
あんまり変わってない…
悩んで考え出したのがコレなのか!?
「何でΣ…?」
「だって〜Σだったら数学とかでよく出てくるし〜」
まさかこれはヒナ的にミツルの存在を忘れないようにしようということなのか?
いや、だったら始めから名前で覚えれば……
「それはぜ〜ったいにイヤッ!」
「読心術!?っていうか何でそんなにミツルの名前を覚えたくないんだ?」
「だから〜さっきも言ったでしょ〜ザコの名前は覚えたくないのっ!」
「会ったばかりなのにザコザコ言うのは、いくらなんでも可哀想じゃないか?」
「魔法検定2級の試験ぐらいでカンニングしようとして、しかも未遂のまま試験を受けることさえできなくなったヤツなんてザコ以外の何者でもないでしょ!」
「何でヒナがそのことを……?」
B級と2級の受験会場は違っていたのに……
「えっ、あ、それは……と、とにかくもう帰ろ?ね?ね?」
「あ、うん……」
あたしは頭に疑問符をたくさん浮かべながら帰路に着いたのだった……