はみんぐデイズ 55
もちろん周りの雑魚達は痛みを感じる暇もなく、一瞬で蒸発、燃えかすすら残らなかった。
「んふー♪ デート獲得ー♪」
にやにやしながら焼け野原で踊る朱雀。
その姿からは、あの攻撃の凄まじさは想像もできなかった。
朱雀が敵集団を灰にしていた頃、白虎は一人の隊長格とその指揮下にある一個中隊に対峙していた。
「お前は…白虎!?ということは俺たちが相手にしているのは『フィレルの四神』か!?」
白虎に対峙していた隊長格は肩に担いでいた巨大な槍を軽々と回転させて突きの構えをとり、目の前の純白の獣を睨み付ける。
「イエス。いかにもそうだ」
「そうか。野郎ども!!こいつらを倒せば俺達は英雄だ!!気合い入れろ!!」
「「「うぉぉぉぉっ!!!!」」」
隊長は兵士達に檄を飛ばし、兵士達はそれに応える。
「少しはできそうか…?」
「野郎ども!!俺に続け!!」
「「「うぉぉぉぉっ!!」」」
隊長は重厚な鎧を装着しているとは思えない速度で白虎に肉薄し、槍を叩き込む。
しかし遅過ぎた。
隊長の槍は空を突き刺し、代わりに彼の後に追随してきた兵士達が一人残らず地に伏していた。
兵士達の鎧には痛々しい爪や牙の跡が残っている。
隊長は確かに速かった。
しかしその速さが風を切る駿馬のそれならば、白虎の速さは風そのものだった。
「くっ……!」
圧倒的な力の差を見せつけられて、しかし隊長の闘志は少しも衰えていなかった。
むしろその瞳は怒りに燃えていた。
「やるか…?」
「うぉぉぉぉっ!!」
白虎と隊長の一騎打ちは10秒とかからずに終結した。
白虎の強靱な爪に切り裂かれた隊長の亡骸は惨めに横たわっていたが、白虎相手に数秒間持ち堪えただけでも称えられるべきだろう。
「少しは羽根のある奴だと思ったんだが…」
「それを言うなら『骨』のある奴や」
「マスター、こちらクリーンアップコンプリート。ネクストオーダーを」
「次の命令ゆうたってなあ…ウチもノルマが終わったからこっちに来たんやし、楽しそうに殺しとるみんなの邪魔するのも悪いし…」
「それにしてもウチらのこんな姿を可愛い後輩達には見せられへんなあ」
シノは白虎の脇腹を撫でながら自嘲気味に呟く。
「マスター?」
「いや、なんでもあらへん。みんなももう終わったみたいやし、合流してさっさと次のポイントに行こか」
「イエス、マスター」