はみんぐデイズ 6
そう言って彼は、軽やかなムーンウォークをしながら去っていった。
「助かったけど…、何だったんだ…?」
謎だらけだ。性格変だし。めちゃめちゃ強いし。喋り方ちょっとおかしいし…。
「取りあえず帰るか…」
そうしてあたしは、家路に着いた。
「さっき帰り道でめちゃくちゃ怖い目にあったんだ」
『へぇ〜、それで?』
あたしは家に帰り着いてすぐにヒナに電話をかけていた。
さっきのことを誰かに話したかったんだ。
「それでって…まあ、いいや。ナイフを持った男に襲われて、変な男に助けられたんだよ」
『まさかそれだけ?』
「それだけだけど…」
『はあ〜』
電話ごしにヒナの不機嫌そうな溜め息が聞こえる。
『そんなことを言うために私に電話をかけたの〜?ハリからの電話だから毎週楽しみにしているドラマを我慢してまで電話に出たのに〜』
「ま、まだあったよ!助けくれた変な男はマジで変だったんだ」
『……どんな風に?』
うぁー、ヒナますます不機嫌になってるよ。
このままじゃ明日あたりに何かされるかもしれないな。
「そいつ結構ひ弱そうなのに、大柄な男を一瞬で昏倒させたんだ。それに語尾に音符つけてたし、ムーンウォークで去って行きやがった…」
『……それは確かに変だね……で、その変なヤツはどんな魔法で変態を殺ったの?』
「別に変態は死んではないんだけど……って魔法!?アイツ魔法なんて使ってたか?」
『私が聞いてるんだけどぉ〜』
「魔法なんて使ってなかったんじゃないか?魔力の奔流は感じなかったし」
魔力の奔流っていうのは魔法を使うときに全身から魔力が湧きだすことで、強力な魔法ほどその量は多くなる。
『それってハリが鈍感なだけじゃないの〜?普通体格差がある相手を魔法なしで瞬殺なんてできないでしょ?』
「あ、あたしはバカだけど、鈍感じゃない!魔力の奔流くらい感知できる!」
『ま、そういうことにしといてあげるよ♪あ〜あ、どんな魔法か分かれば、手がかりになったんだけどなぁ〜』
「しょうがないか…」
『あれ〜?なんか残念そうだね、ハリ♪』
「べ、別に残念なんかじゃ……!」
『そっかそっか。私は安心したよ♪ハリもちゃんと女の子だったんだね〜』
「だから違うって……!」
『ハリって男みたいな性格だから実は女の子好きなんじゃないかっていう噂もあったんだけど……』
ダメだ…
ヒナはあたしの話が耳に入っていない。
あたしはヒナの不機嫌を直そうとして変な所のスイッチを押してしまったらしい。
……って、ちょっと待てぇ!
「誰が女好きだぁぁ!!」