はみんぐデイズ 42
「…B級は、魔法と魔法を組み合わせたらどうなるか、とか、何か物を使って魔法の威力を増幅させる方法とか、色々なのが出て来るんだよ」
黙々とヒナは語った。
ミツルがヒナに目をやると、その瞳には涙が溢れていた。
「まぁ落ちちゃったけどね〜…」
「……もっと勉強しなくちゃな」
「…え? うん…」
「俺も一生懸命勉強するからさ」
「……」
「次は二人で満点合格だろ!?」
ミツルは笑いながら言った。
「…ミツルのバカ」
ヒナが初めて、ミツルの名前を本名で呼んだ。
「…あ?今ミツルって…」
「さぁこうなったら勉強!!はい!!『大魔神セルフィラン』の武器の名は?」
「…知るか!!」
保健室に、笑顔が戻ってきた。
その時突然保健室の扉が開いた。
「失礼します。クリス先生、いらっしゃいますか?」
扉を開けて入ってきたのは、黒髪を三つ編みにし、眼鏡をかけている女生徒だった。
「クリス先生なら洗濯に行ってていませんよ〜」
ヒナが目尻に残った涙を拭いながら言う。
「そうですか…ん?あなたは『風』属性の朝月ヒナさん、そして隣は『火』属性の三条ミツル君ですね?」
「…どうして俺達のことを?」
ミツルは困惑しながら三つ編み少女に尋ねる。
「あなた方二人は先日の訓練で優秀な成績を残していましたから。あ、申し遅れました。私は遠山カリンと言います。生徒会に所属し、風紀委員長を務めさせてもらっています」
「生徒会役員っすか〜」
今日は生徒会の人によく会うなあ、と思うミツル。
彼の脳裏には痛みの記憶ばかりがフラッシュバックしていることだろう。
「クリス先生もいらっしゃらないようなので、私はこれで失礼します。あなた方とは近いうちにまた会うことになるでしょう。あ、それから『大魔神セルフィラン』の武器は『神槍ハルヴァンタイン』ですよ」
「「へ?」」
ヒナとミツルは顔を見合わせる。
何でそのことを?とでも言いたげな顔だ。
「廊下にまであなた方の声が響いていました。保健室は大声で騒ぐ場所ではなく、病人が静かに体を休める場所であるということをお忘れなく」
カリンはそう言い放つと保健室を後にした。
「………………」
「………………」
残された二人はしばらく声を出すことができず、保健室は再び沈黙に包まれた。