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はみんぐデイズ
恋愛リレー小説 - ラブコメ

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はみんぐデイズ 40

さて、やっと落ち着いた所から。
「あらまぁ、そうだったんですの。あたくしってば勘違いを。失礼の極みですわ…」
「い、いえ、一応助かりましたから…」
ミツルはエリカの弁解に苦笑いを浮かべることしか出来なかった。
そこにミツルの命の恩人であるクリスが人数分のコーヒーをトレイに乗せてやってきた。
「でもとんだ厄日ね、ミツルくん」
「あはは…なんつーか、もう慣れっこで…」
そしてミツルとクリスが話しを始め、エリカは先程から腹に抱きついているヒナを見やった。
「そういえば、どうして泣いているんですの?」

「ふぇぇ、試験に…ひっく…落ちたからですぅぅ。先輩ぃぃ」
ぎゅぅぅ〜。
「あらあら、痛いわヒナさん。でも安心して。あたくしもS級の試験、落ちてしまいましたから」
「え…」
ヒナは顔を上げてエリカを見上げた。
「え、嘘ですよね先輩?」
ミツルも思わず訊いてしまった。
しかしエリカはすまして首を降った。
「あたくしも詰めが甘かったようですわ。だからヒナさんも次の試験で一緒に受かりましょ、ね?」
それはヒナを泣き止ませる程に衝撃的な事件だった。
「それとも…」
途端にエリカは表情を曇らせた。
「あたくしは次も落ちてしまうのかしら……」
するとヒナは慌ててエリカから離れて首を降った。
「そ、そんな…そんなことないです、エリカ先輩なら次で受かれますよ〜」
「そうかしら。ならヒナさんも次で受かれるわね。そうじゃないと、あたくし、受かれそうにありません」
ヒナはもうエリカのペースにはまっていた。
「だ、大丈夫です。次は受かってみせます!」
「あらあら、いきなり頼もしいこと。じゃあ受かったらアップルパイね」
「え、本当ですか〜?」
ついにヒナに笑顔が戻り、エリカは密かにクリスにウインクした。
クリスは小さくため息をつき、グッドサインをしてみせた。
「それでは、あたくしはそろそろお暇しますわ。長居して申し訳ありませんでした」
エリカはそう言って保健室を出た。
すると保健室前の廊下にシュウジが寄りかかっているのを見つけた。
「あらシュウジさん。もしかして、ずっとそこに?」
「ああ。ミツルのことが気になってな。あれでも『炎』属性の優等生だ。何かあってはたまらん。
しかしエリカくらいになると演技までこなせるのか」
「何の事ですか?」
「良く言う」
シュウジは寄りかかっていた壁から反動を付けて離れた。
「S級の試験を満点で受かっておきながら、よくもあそこまで声色を変えられる」
「あら、あたくしはただ後輩を元気付けるために嘘をつきましたのよ」
「いつかバレるぞ」
「ふふ、『未来』の自分事を無くして、他人事の『今』を助ける。それが自己犠牲というものですわ」
「…そうか」
シュウジはエリカの考えを悟ってそれ以上は聞くまいと廊下を歩き出し、エリカもそれに続く。
「しかし、エリカもS級か。これは俺もウカウカしていられないな」
そう言うシュウジにエリカは声を上げて笑った。
「? 何が可笑しい」

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