はみんぐデイズ 30
「三条クンは<熱>の能力で自分の周囲の空気の温度を上げ、それで上昇気流を産み出してウインド・カッターを避けたんデスヨ。ウインド・カッターは鋭く、殺傷力は高いデスガ、薄っぺらくて軽いデスカラ」
「3級のミツルにそんなことができるなんて…」
「三条クンは本当はC級かB級くらいの力を持っているんデスヨ?」
「じゃあどうして…」
「ソレはココに問題があるからデス」
そう言って人差し指で自分のこめかみをつつくロボさん。
「ああ、なるほど…」
「でもソレは彼のせいではないと思いますヨ」
「え、どういうことですか?」
「私は学力で魔法の能力を測るのはオカシイと思っているんデスヨ。だから今の魔法検定制度に反対なんデスヨ。三条クンのような優秀な人材が評価サレズ、逆に頭でっかちの能ナシがこの国の政治を司ってイル。しかし議会の中には試験制度の改革を唱える人が結構いますカラ、そのうち試験制度は変わるかもしれないデスネ」
あたしが視線を戦場(ただの道端)に戻した。
ヒナが両腕を伸ばして、おにぎりでも握るかのように両手で何かを包んでいる。
「先生、あれは?」
「あれは圧縮した空気を打ち出すエア・マグナム。ウインド・カッターと同じくらいポピュラーな<風>の攻撃呪文や。やろ、先生?」
「はい、そうデス。ウインド・カッターが殺傷力を重視した呪文なら、エア・マグナムは打撃力を重視した呪文デス。恐らくあの呪文なら<熱>の障壁を破ることができるデショウ」
対してミツルは右手をヒナに向けて伸ばしている。
「あれは…?」
「あれは熱気弾や。ほんまに何も知らんのやなあ、皆月は」
「すみません。あたしバカなもんで…」
「熱気弾は熱を一点に集めて打ち出す呪文で、性質はエア・マグナムと似ているんデスガ、高熱による追加効果がある点がチョット違うんデスヨー」
「へぇーそうなのかー」
うん、勉強になるなあ。
「エア・マグナムと熱気弾の力は互角やけど、今回は三条の勝ちやな」
「そうデスネ」
どうしてそんなことが言えるんだ?
「朝月の周りを見てみ」
あ、あれは…
「氷の矢!?」
どうして氷の矢が?
「ヒナ、動くなよ。動くと俺の氷の矢が突き刺さるぜ」
「なんで氷の矢なんかが浮かんでるの〜?」
ヒナにも全く意味が分からないようだ。
「ヒナに分からないみたいなんで、解説をお願いします」
「三条クンは朝月サンの周囲から熱を集めていたんデスヨ。どういうコトか分かりマスカ?」
いえ、全く…
「ではマイヤーとヘルムホッツが発見したエネルギー保存の法則は?」
「それは知ってます」
確かエネルギーの総和は変わらないってやつだよな。