はみんぐデイズ 28
「新聞部部長にしてジャーナリストの鏡、そしてジャーナリズムの権化であるウチにそんなことができると思うんか?」
いえ、決して思いません。
「さっきのムービーをチェンメにしていろんな人に回したり、今度の校内新聞の一面トップにしたりせんだけでも感謝して欲しいなあ〜」
先輩、なんて事考えてんですか!
「それはマジで勘弁してくださいっていうか、ホントにそんなことしないですよね?」
「うーん、たぶん…」
いや、たぶんって…
「ところで確か今日はまほ検の合格発表の日やったなあ。二人も受けたんやろ?」
あたし達は普通「魔法検定」を略して「まほ検」と呼ぶ。
「はい、私はB級、ハリは2級を受けたんですよ〜♪」
「八坂先輩は何級を受けたんですか?」
「ウチか?ウチは受けとらんよ」
上半期のまほ検は必須だったはずだけど…
「ん?知らんかったんか?S級からは自由受験なんや」
「そうなんですか〜♪」
「今回S級を受験したんはエリカだけや。他の人は受験しても受からんって諦めたんやろ。そしてウチもその中の一人や」
八坂先輩ほどの人が受験を諦めるS級ってどれほどなんだろう?
「S級ってそんなに難しいんですか?」
「そうやな〜A級と比べて十倍くらい難しいんやないか?」
「…………………」
エリカ先輩はすごい人だと思ってたけど、そんなにすごい人だとは思わなかった。
今度会ったら手を合わせて拝んでしまいそうだ。
そんな感じで三人で話してるうちにあたしは校門の前で見覚えのある後ろ姿を見つけた。
「ミツル、おはよー」
「おう…ハリか…」
何かミツルの元気がない。
どうしたんだろう?
「どうせ俺は3級のままだ…」
なるほど、試験を受ける前に失格になったミツルが2級にあがることは当然ないな。
「まあ、元気だせ。次があるさ」
「雑魚は何回やっても同じだと思うよ〜」
あたしはそう言ってミツルを慰めたが、横からヒナが精神的ボディブローを喰らわす。
「俺が雑魚かどうか、実際に試してみるか?」
さすがのミツルもキレたらしい。
身体から陽炎が出ている。
「自分がどんなに脆弱で矮小な存在かを思い知らせてあげるよ♪」
対するヒナも身体に風を纏って戦闘状態だ。
道のど真ん中で決闘なんて危ない!
常識人のあたしが止めなければならない!
だってあたしの隣にいる人は頭に鳥を乗せて、ニヤニヤしながら二人を眺めているからだ。
「ヒナ、ミツル、危ないから止め…」
「「うるさい!」」
ステレオで怒鳴られてしまった。