空はいつまでも… 10
いつも、穏やかな物腰の今日子さんの語尾が、今は強く感じる。
「今日は、店長が上がりなさいって…お疲れ様」
えっ……用済みって事?
オレはいらないという事なのか?
「今日子さん、今日は暇だから帰れって事なんでしょう?」
そうだと言ってくれ、今日子さん。
「今日は、疲れたでしょ?ゆっくり休んで」
何かが、崩れたような気がした。
自分は誰にも、必要とされていないのか…
「…じゃあ、上がります」
オレは更衣室に行くために、出ようとした。
「ごめんね、恭一」
消え入りそうな亜由美の声が聞こえた。
オレは、それに答える力が残っていなかった。
店を裏口から出ると麻ちゃんがいた。
「あれ、もう上がりなの?」
出来る限り出せる力を振り絞った。
「えっと、先輩を待ってたんですよ」
麻ちゃんが、オレに笑顔を向けてくれるが、今はその笑顔が煩わしく感じる。
「昨日は、本当にありがとうございました。
今日は私が、どこかに案内しますよ」
こっちですと言って麻ちゃんはオレの手を引っ張った。
麻ちゃんは、オレをどこにでもありそうな公園に連れてきた。
辺りは、暗くなっていて公園には、オレらを除いて誰もいない
「わぁー、ブランコなんて久しぶりですね!
先輩、一緒にブランコで遊びましょう」
いや、全くもってそんな気分じゃないのだが…
「うーん、また今度にしておくよ」
「そうですか?面白いのにー」
麻ちゃんはそう言って、頬を膨らます。
オレは、ボーっと麻ちゃんの乗るブランコの揺れを見ていた。
「あのね、私がいつも、失敗したりすると先輩がいてくれた」
急にどうしたんだ?
「私は、先輩の事が大好きです…だから、力になりたい」
ふーん、好きなんだ。
えっ、オレのこと?
「私を、先輩の女にしてください!!」
はいーーー!?
生まれて初めて、女の子に告白された。
どうしたら、良いのかわからないオレは、亜由美は今、何をしているのかと失礼な事を考えてしまった。
家に帰ったオレは、亜由美に謝るため、亜由美の部屋に行って謝った。
そしたら、亜由美は
「私もごめんね。平手打ちする気なんか、本当はなかったの」
独り言のようにボソッと亜由美は
「気に入らなかった…もっと、私を見て欲しかったの」
はあ?麻ちゃんと良い亜由美と良い…何があったんだ。
「何言ってるんだよ。
いつも、お前の事を見てんだろう。バッカだなぁー」
っと、つい頭をポンっと叩いてしまった。
反撃がくると思ったが何と亜由美は照れているのだ。
「おいおい、どうしたんだよ」