空はいつまでも… 14
「じゃあ、このバケツに水汲んでくれるかな?
オレは、その水の入ったバケツをエロ店長が指定した場所に持っていくからさ」
「あっ!先輩、また店長の事をエロ店長って呼んでるー」
「良いんだよ。エロ店長はエロ店長だ!」
オレはせっせと水の入ったバケツを指定された場所に持って行った。
麻ちゃんが手伝ってくれたおかげでエロ店長に命令された作業も早く終わった。
「ふぃー、疲れたぜぇ」
オレは疲れたので適当な場所に座った。
「お疲れ様、はい、ごほうび」
今日子さんが、いつの間にか隣にやってきてオレに缶ジュースを渡してくれた。
「あーざいます今日子さん。うぅー、ジュースがちびてぇーぜ」
今日子さんは、ただオレの横で微笑んでくれた。
「どうしたんすか?今日子さん」
「やっぱり、恭一君は変わったなぁーって、思ってさ」
いつの間にか、みんな花火をおっぱじめていた。
「変わったって、どこが変わったんすか?」
あれ?なんだろう今日子さんと喋るのが物凄く久しぶりな気がする。
「どこがと聞かれると困るけど、雰囲気かな」
「雰囲気って、具体的になんすかー?」
どうしたんだろう、今日子さんと喋っていても緊張しない…
「うーん、なんか生き生きとしてるよ。亜由美ちゃんが来てからかな」
「生き生き…すか」
「素の自分が出せる人って、なかなかいないと思うの…だから、大切にしないとダメよ」
「何言ってるんすか。大切にする必要なんかないですよ」
「まぁ、後悔だけはしないでね」
「後悔なんか、いつするんですか?」
「いつかするのよ」
あまりに寂しそうな顔を今日子さんがするものだから、オレは何も言えずじまいだった。
「恭一ぃぃぃぃ!!」
いきなり、亜由美がロケット花火をこちらに向けて火をつけようとしている。……そんな悠長に説明している場合じゃない。
「おい、あぶねぇよ!!」
「へっへーん!これでもくらいなさい!!」
オレは『あぶねぇ』と言っておきながら、今、この時を楽しんでいた。
オレは、こんな時間がいつまでも続くと思っていた。
だが、時間に永遠はなかった……
翌日、オレは身を持ってその事を知った。
それは、本当にいきなりだった。
花火大会が終わった後、一緒に亜由美と家に帰った事は覚えている。
朝、起きたら…いつも朝飯を作っているはずの亜由美がキッチンにいないのだ。
「亜由美寝てるのか?」
亜由美の部屋の前でオレは何度もノックをする。
「亜由美、何かあったのか!?」
オレは段々不安になってきた。
不安が増すにつれ、ノックも乱暴になる。
「亜由美!入るぞ!!」
亜由美の部屋のドアを蹴っ飛ばそうとした…
「おい、家を壊すんじゃない!バカ息子!!」
親父だった…そういえばこんなのもいたな。
「だって、亜由美が呼んでも出てこないんだぜ」
「おい、まずお父様に挨拶をせんか挨拶を」