空はいつまでも… 12
「恭一ぃぃぃ。どうしょーう。私、浴衣持ってないよー」
「わかった!わかったから離れろって!!」
いきなり亜由美がオレの腕にくっついてきた。
「むぅー、ちょっと亜由美先輩!!恭一先輩にくっつき過ぎですよ!!」
「もぅー、麻ちゃんも、うるさいよ」
亜由美はふてくされる。
「家に母さんの形見で浴衣があるはずだから、お前に貸すわ」
「えっ、叔母さんの…」
「まぁ、どっちにしてみても家に帰ってみてからだな」
今日のバイトは明日の事を期待しながら何事もなく終わった。
夕方頃、帰宅した。
早速、家の物置部屋に入って母さんの形見の浴衣を探している。
「確か、ここら辺に…あった!」
水色の水玉模様で統一された浴衣…決して流行の柄ではない。
むしろ、ダサいぐらいである。
だけど、オレにとっては大切な浴衣である。
「恭一、ごはんだよー」
おっ、ちょうど良い所に亜由美が来た。
「亜由美、見てみろコレが、今日、言っていた浴衣だぜ」
これで、形見の浴衣にケチを着けるようだったら渡さないぜ。
早速、家の物置部屋に入って母さんの形見の浴衣を探している。
「確か、ここら辺に…あった!」
水色の水玉模様で統一された浴衣…決して流行の柄ではない。
むしろ、時代を逆行してある。
だけど、オレにとっては大切な浴衣である。
「恭一、ごはんだよー」
おっ、ちょうど良い所に亜由美が来た。
「亜由美、見てみろコレが、今日、言っていた浴衣だぜ」
これで、形見の浴衣にケチをつけるようだったら渡さないぜ。
「……」
オレから浴衣を受け取った亜由美は、浴衣を見ながらしばらく黙っていた。
そして、目を潤ませながら、こう言った。
「なんか、とても綺麗で優しい浴衣だね」
えっ、優しい?空耳!?
「この浴衣から、なんか深い愛情と優しさを感じるの」
おいおい、この女はこんな臭いセリフを吐く奴だったけ!?
「恭一のお母さんを思い出したの」
「それ、お前にやるよ」
「えっ、こんな大事なモノもらって良いの?」
「良いんだよ。そのために、この物置の中から出したんだ。
それ持ったら、悪いけどちょっと、ココを片付けるから部屋から出てくれるか」
「うん、御飯は食べる?」
「うん、後でな」
亜由美が物置部屋から出たあとオレは一人で母さんが生きていた頃を思い出していた。
「母さん。優しい浴衣だってさ…良かったよな……ホントにさ…ホント」
どうしようもなく涙が溢れ出した。
止まれと祈っても涙は止まらずに、どんどん溢れ出してくる。
オレは一人、物置部屋で母さんの事を思い出しながら泣いていた。