恋人未満 3
「雑誌にのってるみたいにきれいな服きてて、ばっちりメイクもしてあってさ。
写真のこともあんま、わからなさそうだったし」
最初だから、確かにおしゃれはしていた。
けど派手なわけじゃなかったと思う。
先輩うけもいいお嬢さま系、なんて雑誌の文句を信じたのだけど、写真部の先輩はみんなラフな格好にほとんど化粧もしてなかった。
私も今はラフな服をきてるときの方が多くなった。
今日もジーンズに適当なシャツをはおっているだけ。
朝が早かったからメイクも適当。
「眠いよー」
2日ぶりのトシヤに訴えて、私は適当な椅子に腰をおちつける。
「昨日おそかったん?」
「いつも通りだよ、2時ぐらい」
「もっと早く寝ればいいのに」
トシヤが苦笑いする。
「うん、その通りなんだけど。
そうだ、昨日バイトで…」
トシヤとは不思議に気があった。
写真は好きにしろ、特に共通点があるわけじゃない。
趣味も育ちかたも違うのになんとなく話しやすい友達。
来るまでに買ってきたパンをつまみながらくだらない話をする。
途中でミカさんもきて、三人でそれぞれバイト先について語る。
かみあうようなかみあわないような、でも盛り上がる話慣れた相手との会話のリズム。
「沙希そろそろいかん?」
そして授業5分前にはトシヤは必ず切り出す。
「そうだね。
それじゃミカさん、お疲れ様です」
次の時間は並んでうけられる。
こんなに一緒にいるのに、まだうれしいと思うなんて重症だ。
トシヤとは学校でほとんど用がすむ分、外で会うことは少ない。
目的なく二人で遊ぶことはない。
この微妙な距離感を私はずっともて余していた。
もっと会いたい。
でもそのためには、トシヤにうちあけることになるかもしれない。
私がいかに彼のことを好きか。
…今さら?
トシヤはどう思うだろう。
もしそのまま気まずくなったら。
私が下心をもってトシヤと接しているととられてしまったら…。
今までの関係には戻れない。
それが怖くて私は動けない。
もしも、もしもトシヤも私ともっと会いたいと思っていてくれたら。
そうしたら同じように考えるんじゃないだろうか。
たぶんトシヤも言ってくれない。
あと少しなようで、私たちの距離をうめるのはむずかしそうだった。