ONLY 1
―――ガタン。
『う゛ぅ』
「またガーターかよ。」
バイトにも慣れてきた頃、親睦を深めよう!という事でボウリング場へ。
でも…。
「真美ってほんっとにボウリングしたことないんだな。」
『はぃ。』
さっきから話してるのは1コ上の龍斗先輩。バイトの初日、いろいろとお世話をしてくれて以来すっかり仲良し。
ちなみに真美は私の名前。大学1年生の19歳。
「お前なぁ。ボウリングした事ないってどんな人生だったんだよ。あ、次俺か。」
すっごく意地悪な顔で笑った後、レーンに向かって行った。
『別にボウリングしなくても生きてこれたもん。』
ほっぺを膨らまし小さな声で自分を励ます。その姿に他のバイトメンバー(男女問わず)は「かわいい!」と心で叫び、悶えまくった。
そこへ。
「やっぱ久々にやっと燃えるなぁ。」
とさっきよりもテンション3割増で真美の隣に座る龍斗。
『?先輩あと1回あるよ?』
さっき2回投げるって言ったのは先輩なのに1回で戻って来た。意外とドジだなぁ〜と思っていたら。
「ストライクっつって全部ピンを倒したら2回目はねぇんだよ。ま、真美には一生ねぇから覚えなくていいよ。」
『ふぅん。そーなんだ…って!真美にもあるかもしれないじゃないですか!』
「ムリムリ。ガーターばっかの真美にありえねぇよ。」
『ぜぇったいストライクだすもん!』
『できる』「無理」の言い合いの末。
「はぁ。じゃあ1ゲーム終わるまでに1回でもストライク出せたら何でも言い事聞いてやるよ。」
『言いましたね?やった〜何にしよっかなぁ。』
早くも龍斗に何て言うか考える真美。早過ぎだろうよ。
「いっとくけど出来たらの話だからな。ちなみに出来なかったら俺の言う事を聞いてもらう。」
『へ?何それ?ずるい!』
「何?出来ないの?」
龍斗の意地悪な笑顔と挑発的な目を向けられ。
『分かりました。後で後悔しても知りませんからね!』
「単純な奴。」
と嫌味をいいつつも、真美の頭を撫でまわす龍斗の目が優しい事を真美が分かるはずもなく。
『もー。ぐしゃぐしゃになったじゃないですかぁ!』
と涙目で睨む真美。
「はいはい。(ったく。お前が睨んでも上目使いにしか見えねぇよ。)ほらお前の番だってよ。ストライクとるんだろ?」
『ふぇ?…あぁ!ごめんなさいぃ。』
「可愛いねぇ、真美ちゃんは。」
「あ゛ぁ?なんだ亮か。」
「なんだはないだろうがよ。それに親友は睨むもんじゃねぇよ。」
「うっせ。誰がお前と親友っつったよ。」