tomoka 8
いきなり切り出したあたしを少しも疑うことなく、アキラについて語り出す直樹。
外見は怖そうだけど優しいヤツ。
男らしいのに部屋がキレイなとこ。
サッカーをしてて、高校時代はいいとこまで行ったこと。
話し出すとキリがないくらいアキラの事を語り出した直樹に少し驚いた。
お酒が入ってるとはいえ、こんなに饒舌な直樹は初めてだったから。
「アキラくんの事、大好きなんだね。」
そうゆうと直樹は、
「ラブラブだから。」
この後もアイツの家に行くしさ、と笑顔だった。
店の中に戻ると、みんなもう出来上がっていて。
二次会が終わったころには、みんな立っているだけでやっとのようだった。
いつものようにタクシーに便乗して友達の家に泊めてもらった。
歯だけ磨いて寝ようとした時に、自分の指に違和感を感じた。
親指が重い?
焦点が定まらない目を凝らしてよく見ると、シルバーのリングが嵌っていて。
「それ、直樹のじゃない?」
友達に言われて初めて気付いた。
確かに2時間前には直樹の指にシルバーのごついリングが嵌っていた記憶がある。
何でそれがあたしの指にあるのかは全く覚えてなくて。
疲れていたのもあって、直樹へは明日連絡することにした。
─カオリ
顔の無い男が、あたしの名前を呼ぶ。
─カオリ
何度呼ばれても振り返らないあたしにイライラしたのか、男の声に怒気がこもる。
「香!」
目が覚めると友達の顔が目の前にあって。
夢の男とは違って心配そうに覗きこむカナがいた。
「大丈夫?うなされてたみたいだけど…」
そう尋ねるカナ、大橋加奈は学校の近くに一人暮らしをしているサークルの友達で。
あたしが飲み会で遅くなる時はカナの家に泊めてもらうのが常だった。
「…大丈夫。
ごめんね、うるさかったでしょ?」
なんでもないようを振る舞ってそう言うと、体を起こす。
時計を見ると、もう11時を過ぎたところで。
朋子とお昼から会う約束をしていたことを思い出して、慌てて準備をし始める。
カナにお礼を言って外に出ると、今日は良い天気のようで。
日焼け止め塗らなきゃ焼けちゃうな…と思いながら走り出す。
朋子と約束したのは学校の近くのスーパーの前で。
今日は朋子と焼きそばパーティーをする予定だった。
走ったお陰で約束の時間の5分前には着けて。