tomoka 1
─あたしは22年間普通の女で。
普通の男性と恋をして終りも知ってきた。
─同性を好きになるなんて、自分とは違う世界のことだって思ってた。
─だけど、あたしはあの子に出会ってしまって。
─この世の中に絶対なんてことはないんだってことを思い知った。
「香、おはよ。」
振り向かなくても朋子だって足音で分かるよ?
なんて言ったらこの子はどんな顔をするんだろう。
「おはよう、トモコは朝から元気だね。」
良いことでもあった?
と聞くと朋子は顔を真っ赤にしていた。
分かりやすいなぁ。
そんなとこが、朋子がみんなに好かれる理由なんだと思うけど…
この可愛い子、今野朋子とはバイト先が一緒で。もう知り合ってから4年経つ。
仕事熱心で、誰に対しても心からの笑顔を見せる朋子の接客は評判で。
社員にならないか、という誘いも受けているみたいだった。
「カッコイイ人でも紹介された?」
朋子は昨日、アキナという友達の彼氏の友達を紹介してもらう約束をしていて。
バイト中も上の空だった。
「それがね、もうスゴイ…」
と言ってから、自分の声のボリュームが大きすぎたのに気付いたようで。
「…もうすごくカッコイイ人だったの。」
とうつ向きながら呟くようにそう言った。
「やったじゃん。」
上手くいくといいね。とあたしは心から思った。
だって朋子に彼氏が出来たら、あたしも諦められると思ったから。
朋子に対するこの気持ちを。
「で、どういう人なの?」
「えーっとね、アキラくんて言うんだけど、背が高くて、ガッシリしてて、髪が短くて、サッカーやってて、それで笑うと本当に優しい顔するの。」
もうあの笑顔にやられちゃったよ〜、と真っ赤な顔を手で隠す朋子。
朋子は自分では自覚していないみたいだけど、人気が高い。
特別可愛いっていうわけではないんだけれど、その雰囲気が好感を持たれるみたいで。
よく知らない人から誘われたりしていた。
アキラって人も朋子の良さに気付いてると思うし。
付き合うのも時間の問題かな…と思っていた。
「今度はいつ会うの?」
そう聞くと、朋子は初めて寂しそうな顔をして。
こんな顔を見たら、男なら抱き締めてあげたくなるんだろうなぁ。と頭の隅で考える。
「…誘われなかったの。メルアドも、あたしから教えて?って言ったの。