tomoka 7
「良いやつなんだけど…な。」
恋って難しいなぁ。と自宅の居間でため息をついていたら、母親に心配された。
あたしがアイツと別れて以来、彼氏がいないことにホッする反面、心配になるようで。
大丈夫だよ?と言って席を立つ。
授業の用意と、鞄を持つと、まだ心配そうな顔をする母親に声をかけて家を出る。
今日は2コマからだから、時間には余裕がある。
自転車を漕ぎながら、あたしは水曜の飲み会のことで頭が一杯だった。
─待っていると中々その日にはならないもので。
水曜日までの3日間が3ヶ月間にも感じられた。
「乾杯〜」
待ちに待った水曜日。
今日は良い潰れないようにと、ペースを抑えて飲み始める。
暗黙の了解として、一次会はビールだけと言う決まりがあって。
もちろんこの日もピッチャーで出ている。
チラリと直樹の方を観察すると、随分飲まされているみたいで。
二次会じゃ潰れて話できなそうだな…
と判断したあたしは直樹の席の近くに移動して、チャンスを窺うことにした。
開始から1時間も経つと、チラホラ潰れる人が出てきて。
あたしはフラフラしている直樹を支えるように洗面所へ向かう。
「直樹大丈夫?」
比較的意識がハッキリしているあたしが尋ねると、返事の替わりにノックが返ってきた。
まだ大丈夫、かな。
後5分待って出てこなかったら男の人に見てもらおう。
と思っていたら、ドアが開いた。
青い顔をした直樹の手を引きながら席に戻ろうとすると、
「かおり、外の空気吸いたいかも…」
と直樹が言うから、お店の外に二人で出た。
本当は心配かけるだろうから、一言かけてから来れば良かったんだけど。そんな余裕はなくて…
お店の階段に直樹を座らせると、その隣に腰を下ろす。
どう切り出そうか考えていたら、直樹が口を開いた。
「かおり…あのさ。」
「…ん?」
「あのさ、ともこちゃんてさ…」
「かわいいよね…」
けっこうはまってるんだね…
たった一、二回会っただけでそこまで思える直樹がスゴイよ。
「…ね、直樹さ、アキラくんて知ってる?」
「明?」
「うん、高橋明くん。」