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tomoka
恋愛リレー小説 - 同性愛♀

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tomoka 43

―視界に映る色が白しかない
そんな体験を自分がすることになるとは思わなかった。
もう何度目かになる悪態を雪の壁に吐きかける。
「…っとに、なんでよりによってこんなとこにいるのよ!」
自慢じゃないけれどあたしは程よい都会育ちで。山の中なんてもとより、雪山なんて足も踏み入れたことがなかった。
 そんなあたしが何故こんなところに来てしまったのか。

 そのことを説明するには一ヶ月ほど前に時間を遡る必要がある。

 直樹があのクリスマスの日から朋子の前から姿を消して。
―視界に映る色が白しかない
そんな体験を自分がすることになるとは思わなかった。
もう何度目かになる悪態を雪の壁に吐きかける。
「…っとに、なんでよりによってこんなとこにいるのよ!」
自慢じゃないけれどあたしは程よい都会育ちで。山の中なんてもとより、雪山なんて足も踏み入れたことがなかった。
 そんなあたしが何故こんなところに来てしまったのか。

 そのことを説明するには一ヶ月ほど前に時間を遡る必要がある。

 
 
直樹があのクリスマスの日から朋子の前から姿を消して。その理由を手に入れるために、あたしは頭に思い浮かんだ最初の人物の元へ向かった。
 ところが玄関のチャイムを鳴らして出てきた人物は予想とは違った人だった。

「あきら?!」
「、ありさ…ちゃん?」

「…かおりぃ…」
 そう言ってドアを開けたまま泣きじゃくるありさを落ち着かせようと、とりあえず玄関に入って扉を閉めた。
「、どうしたの?」
 両手で顔を覆ったままのありさの手を引いて奥の部屋に連れて行く。
 目に付いたコタツにありさを座らせても、ありさの涙は止まることをしらないように溢れ続けていた。

 温かいものでも飲めば少しは落ち着くかな…
 勝手に台所を借りてもいいものか分からなかったけれど、非常事態なんだから仕方ない!と自分に言い聞かせてガラス戸棚からマグカップを拝借する。
 

 男の人の一人暮らしとは思えないくらいきちんと整頓された台所は、初めて足を踏み入れたあたしでも、どこに何が置いてあるかがだいたい分かった。
―見た目によらずキレイ好きなんだよ。
 そう言っていたのは直樹だっただろうか。


 銀色に光るやかんを火にかけながらそんなことがふっと心をよぎって。ほんの少し前の日常が恋しかった。
 

 目に付いたインスタントコーヒーの瓶からスプーンで一さじづつ、粉末を二つのカップにそれぞれ入れる。ミルクなんて気の利いたものはないようなので、ブラックのままありさの元に運んだ。

 直樹といい明といい…なんでドイツもコイツもいなくなるのよ。
 でも―直樹は実家にいるとして、明はいったいどこにいるんだろう。 
 ありさの話によれば、実家にもこの家にもずいぶんと長い間帰っていないようだし…
 

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