tomoka 5
「それで、今度はいつ会うの?」
そう聞くと、朋子は慌てたように手を振って、
「違うの、全然まだそうゆうんじゃなくて…」
何の約束もしてないの。とうつ向く朋子は、まるで捨てられた子犬みたいで。
よしよしって頭を撫でてあげた。
「少しづつさ、気付いてくれるよ?」
朋子が良い子だってさ。と言うと、朋子は少し元気が出たようで。
それからはいつも以上にはりきっているように見えた。
「あ、そういえばさ。アキラくんの友達に直樹っていない?」
「ん〜、聞いたことないなぁ。」
その日のバイト帰りにそう尋ねると、予想していた答えが帰って来た。
アキラって言ってもたくさんいるだろうし。
直接直樹に聞けばいいんだろうけど、聞きずらいよね…
あたしの友達が好きなアキラって人、直樹の友達?なんて。
直樹はまだ朋子とアキラのこと知らなそうだし。
知っていたら、あたしにあんなこと言わないだろうし…
そうなると、朋子の見込みがどんどん低くなっていく気がする。
だって普通、好きな子ができたら友達に相談するでしょ?
─そこまで考えて、あたしは考えるのを止めた。
人の気持ちなんて、その人じゃないと分からないものだから。
いくら他人が想像しても、それはただの想像で。
勝手に想像して、勘繰って。
傷付け合うのはもう、
「…香?」
「えっ?」
朋子の声に、ハッと我に返る。
「次、香が降りる駅だよ。」
大丈夫?今日のバイトきつかったもんね。
と言う朋子の顔をまじまじと見つめる。
─なんでアキラは朋子じゃ駄目なんだろう。
恋愛は本人同士の問題だって分かっているけど。
あたしはアキラに聞いてみたかった。
あなたは誰が好きなの?
「それじゃ、お疲れさま〜」
そう言って電車を降りる。
あたしの家はこの駅から自転車で15分くらいのところにあって。
バイト帰りのほてった体を、自転車の引き起こす風が冷ましてくれる。
この瞬間が好き。
今日も一日お疲れさま、って自分に言ってあげたくなる。